- 作者: パトリシアハイスミス,宮脇裕子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1991/08
- メディア: 文庫
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ハイスミス中期の代表作、待望の翻訳。(粗筋紹介より引用)
1962年にイギリスのハイネマン社から刊行。1991年翻訳。
ハイスミスの代表作という謳い文句だが、読み終わってなるほどと思った。確かにハイスミスらしい嫌らしさと薄気味悪さが漂う作品。主要登場人物のいずれもが壊れている。ロバートは人間嫌いで据え膳食おうとしないし(これは違うか)、ジェニファーはストーカーに惚れて家まで押し掛けるし、グレッグはあきらめの悪いストーカー。しかしこの作品でもっとも壊れていると思う人間は、ロバートの前妻ニッキー。実力がなくれ売れない画家なのに野心ばかり強く、いじめ抜いて別れたはずのロバートにもいまだに嫌がらせをするという、不幸をまき散らす要因を全て持ち合わせた人物。いずれにしても、壊れた人物ばかりがそろうんだから、悲劇が起きないはずがない。独白にしろ、会話にしろ、行動にしろ、いらいらすること間違いなし。まあ、気になっちゃって先を読むんだけど……。
まずいお菓子だけど一度口にしたら止められない、そんな作品だね。いや、作品そのものの出来はいいと思うんだが、気分が悪くなりたい人向けの作品としか言い様がない。