平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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大沢在昌『雪蛍』(講談社ノベルス)

雪蛍 (講談社ノベルス)

雪蛍 (講談社ノベルス)

薬物中毒患者の相互更生補助施設「セイル・オフ」に、あらゆる感情が「死んで」いる男が入所してきた。男と向き合おうとする佐久間公に、再び「探偵」としての依頼がなされる。十七歳の家出少女を捜して欲しいという。当然、ただの「家出」ではなかった。圧倒的な緊張感みなぎる、大沢ハードボイルドの到達点!!(粗筋紹介より引用)

1996年3月、単行本として出版された作品を1998年3月にノベルス化。



『追跡者の血統』以来10年ぶりの佐久間公シリーズと言えばいいのかな。タイトルのうち「雪」は十七歳の家出少女小暮雪華を探す話。祖母は女優小暮君子、母は実業家小暮冴子。旧知のフリー調査員岡江が殺害され、暴力団なども絡んでくる。「蛍」は「セイル・オフ」に入所してきた薬物中毒患者「ホタル」の話。二つの話が同時に進んでいく。佐久間は言う。探偵とは「職業」ではない。「生き方」だ。それが「生き方」だというのなら、正直寂しい気もするが。

「大沢ハードボイルドの到達点」などと書かれいているし、実際出版当時の評判もよかったことを覚えているのだが、こうして読んでみると無駄に長い気がして仕方がない。チャンドラーを読んでいて思ったことと同じ感想を抱いた。グダグダいうならさっさと仕事をしろと。実際は探偵としての仕事をしているのだが、どうも途中で生き方とかなんかにかかわるようなモノローグが入ると、虫唾が走るんだよな。短編なら許せるのだが、これぐらい長い長編で書かれるともうだめ。こればかりは好みとしか言いようがない。

背中をかきたくなるようなむず痒さを覚えながらも、最後の方はスピードアップして読むことができたから、やっぱりそういう点では一流作家なんだと思ってしまう。長さの割に読みやすいと言えば読みやすいけれどね。それだけかな。