- 作者: ドンウィンズロウ,Don Winslow,東江一紀
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1993/11/12
- メディア: 文庫
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1991年発表の処女作。1993年翻訳。
そういえばこれも評判が良かったから買ったんだよな、などと昔を思い出しながら読んでみた。
父親不明、母親娼婦で麻薬中毒。ニューヨーカーであり、コロンビア大学院生でもあるニール・ケアリーが、銀行の秘密組織である朋友会の依頼により、家出をした上院議員の娘アリーを探すためにロンドンへ飛んで活躍する話。まあこれだけだったら単純な私立探偵ものになってしまうが、この作品の面白いところは、ニールがスリをしていた少年時代に知り合った片腕の私立探偵ジョー・グレアムに探偵術をたたき込まれるという設定である。父親のいないニールにとってグレアムは父親代わり。その複雑な関係が、物語に深みを与えている。家出をする少女に近い年齢の探偵という、ちょっと間違えると「経験もないのになぜか能力の高い私立探偵」という非現実的なストーリーになりやすい設定に説得力を与えているところも巧みだ。1章途中におけるグレアムとニールのやり取りは、少々長く書きすぎて本筋の流れを損なったのではないか、という気もしたが。
単純に見つけてハイ終わり、という私立探偵ものではなく、その後は大人の思惑に振り回されつつも頑張ってしまう青春物語ともいえるようなストーリーが続くのもまたいい。うん、こういう話に弱いんだな、自分。
続きを読みたくなる、というかまたこの登場人物たちに会いたいと思える作品だ。そう思いながらダンボールを見ると、次の作品も買っていたことに呆れてしまうんだが、自分に。