平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ドン・ウィンズロウ『ストリート・キッズ』(創元推理文庫)

ストリート・キッズ (創元推理文庫)

ストリート・キッズ (創元推理文庫)

コロンビア大学院に学ぶニールのもとへ急な仕事が舞い込んだ。八月の民主党全国大会で副大統領候補に推されるはずの上院議員が、行方不明の十七歳のわが娘を捜し出してほしいと言ってきたらしい。娘が最後に目撃されたのは三週間前のロンドン。大会までと期限を切られたニールに勝機はあるのか? 時に一九七六年五月、彼の長く切ない夏の始まりだった……。プロの探偵に見込まれ、稼業のイロハをたたき込まれた元ストリート・キッドが、ナイーブな心を減らず口のかげに隠して胸のすく活躍を展開する。個性きらめく新鮮な探偵物語、ここに開幕!(粗筋紹介より引用)

1991年発表の処女作。1993年翻訳。



そういえばこれも評判が良かったから買ったんだよな、などと昔を思い出しながら読んでみた。

父親不明、母親娼婦で麻薬中毒。ニューヨーカーであり、コロンビア大学院生でもあるニール・ケアリーが、銀行の秘密組織である朋友会の依頼により、家出をした上院議員の娘アリーを探すためにロンドンへ飛んで活躍する話。まあこれだけだったら単純な私立探偵ものになってしまうが、この作品の面白いところは、ニールがスリをしていた少年時代に知り合った片腕の私立探偵ジョー・グレアムに探偵術をたたき込まれるという設定である。父親のいないニールにとってグレアムは父親代わり。その複雑な関係が、物語に深みを与えている。家出をする少女に近い年齢の探偵という、ちょっと間違えると「経験もないのになぜか能力の高い私立探偵」という非現実的なストーリーになりやすい設定に説得力を与えているところも巧みだ。1章途中におけるグレアムとニールのやり取りは、少々長く書きすぎて本筋の流れを損なったのではないか、という気もしたが。

単純に見つけてハイ終わり、という私立探偵ものではなく、その後は大人の思惑に振り回されつつも頑張ってしまう青春物語ともいえるようなストーリーが続くのもまたいい。うん、こういう話に弱いんだな、自分。

続きを読みたくなる、というかまたこの登場人物たちに会いたいと思える作品だ。そう思いながらダンボールを見ると、次の作品も買っていたことに呆れてしまうんだが、自分に。