- 作者: 結城昌治
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/08/07
- メディア: 文庫
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連載時のタイトルである『穽』で1965年、カッパ・ノベルスより刊行。「結城昌治作品集」(朝日新聞社)収録時の1973年、本タイトルに改題された。
悪徳刑事を題材にしたクライムノベル。とはいえ、その主人公である沢井の過去から来る虚無感が読者に伝わってくることと、対象となる相手もまた悪いやつの方が多いことから、読者としては沢井に感情移入してしまう。まあそれでも結末を読んだら自業自得と思ってしまうところも作者のうまいところか。まあ最初のあたりはいくら当時としても金額が少なくて、せいぜい利便を図った程度にしか感じられないけれどね。
株取引や会社乗っ取りなど、どちらかといえば経済犯罪小説に使われる題材を選んでいるせいか、登場人物は暴力系ではなくて知能犯罪者が多いことも、単なる悪徳刑事物とは一線を画しているところと思われる。
それにしても、刑事という強い立場にありながら、犯罪に手を染める動機や途中の情事、それに結末など、男としての弱さを見せつけてくれるところは、同じ男として正直怖いね。