平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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恩田陸『木曜組曲』(徳間書店)

木曜組曲

木曜組曲

耽美派女流作家の巨匠、重松時子が薬物死を遂げてから、すでに四年。彼女と縁の深い女たちが、今年もうぐいす館に集まり、時子を偲ぶ宴が催された。なごやかなはずの五人の会話は、謎のメッセージをきっかけにいつしか告発と告白の嵐に飲み込まれ、うぐいす館の夜は疑心暗鬼のまま、更けてゆく。やがて明らかになる、時子の死の真相とは?(帯より引用)

「問題小説」98年4,7,9,11,99年2,5,8月号に掲載されたものを加筆修正。1999年刊行。



背景がわからないままゆっくりと話が流れてゆく序盤の退屈さに、何度も読了を挫折していたのだが、今回気合いを入れて本に向かったらあっという間に読了。なんのことはない、序盤の1/5を過ぎれば、結構面白いじゃないか。

重松時子と縁の深い5人が繰り広げる告発・告白合戦は、今まで表に見えていたものが二転三転する意外な事実の連発。万華鏡をのぞいてくるっと回したら、新しい景色が見えてくるかのよう。しかし万華鏡に入っているビーズに限りがあるように、全ての想いをぶちまけた後には真実が浮かび上がってくるようになっている。ラストの展開は、予想できる人には割と簡単に予想できるかも知れないが、登場人物の心理の綾が垣間見られるラストであるため、読んでいても苦にならないだろう。

しかし、女性だけで集まると、喋るわ食べるわすごいね。女性作家ならではの作品という気もする。また文学に対する考え方は、作者である恩田陸の想いも入っているのだろう。そういう方面から読んでもまた楽しい。