平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ウィルバー・スミス『虎の眼』(文春文庫)

虎の眼 (文春文庫)

虎の眼 (文春文庫)

モザンビーク沖の小さな島国セント・メアリー。かつてはヤバい渡世をしていたハリーも、いまはおとなしく優雅な愛艇を操ってチャーター船業にいそしんでいる。ある日、怪しげな雰囲気の二人組が現われ、危険な岩礁の島へ案内させて海中から何かを引き揚げる。この謎の品物は何なのか? 息つくひまもない危機と冒険の連続。(粗筋紹介より引用)
1975年、ロンドンのウィリアム・ハイネマン社から単行本で出版。翌年、パンブックスからペーパーバック版が刊行。1990年週刊文春ベスト第5位、このミス第7位。



ウィルバー・スミスは、アフリカ在住の人気作家。1987年時点で20冊を著し、16ヶ国語で紹介されているからかなりの人気だと思うが、日本では1990年時点で本作を含めて7作しか翻訳されておらず、現在でもあまり評判になっていない。検索してみたら、現時点で14作翻訳されているが、いずれも絶版状態のようだ。例によって例のごとく、買うだけ買って放置したままになっていたのを引っぱり出した。

本作は、宝探しをベースに置いた古典的な冒険小説。一つ危険をクリアすれば、すぐに次の危険が差し迫るという展開は、あまりにも常套手段ではあるものの、特に海における描写が素晴らしいせいか、それほど気にならない。息もつかせぬ展開を、素直に楽しむことができる。まあ、主人公の頑丈さと強運については、この手の冒険小説ではお約束と思いこんだ方がよさそうだが。

娯楽として冒険小説を楽しみたい人にはうってつけの一冊。それ以上でもそれ以下でもない。面白かったけれどね。