平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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パーシヴァル・ワイルド『検死審問―インクエスト』(創元推理文庫)

検死審問―インクエスト (創元推理文庫)

検死審問―インクエスト (創元推理文庫)

これより読者諸氏に披露いたすのは、尊敬すべき検死官リー・スローカム閣下による、はじめての検死審問の記録である。コネチカットの平和な小村トーントンにある、女流作家ミセス・ベネットの屋敷で起きた死亡事件の真相とは? 陪審員諸君と同じく、証人たちの語る一言一句に注意して、真実を見破られたい――達意の文章からにじむ上質のユーモアと、鮮やかな謎解きを同時に味わえる本書は、著名な劇作家のワイルドが、余技にものした長編ミステリである。江戸川乱歩が激賞し、探偵小説ぎらいだったチャンドラーをも魅了した幻の傑作、待望の新訳。(粗筋紹介より引用)

1940年に書かれ、日本には1951年に初めて紹介された作品の新訳版。



乱歩の随筆によく挙げられていながら、中々手に取ることができなかった作品群の中でも、上位に挙がるであろう一冊。持っていたような気がしつつも買ったのだが、持っていたのは『ベラミ裁判』の方だった(苦笑)。

せっかくの新訳が出たということで期待して読んでみたのだが、苦手な系列の方の作品だった。この手のそこはかとなく漂ってくるユーモアというのが、自分にはどうも理解できないのだ。事件に関係がないような話まで延々としゃべる登場人物に辟易しながら苦労して読み続けていったら、終わってみるとあれが伏線だったのねと驚く結果に。解説にも書かれていたが、確かにこれは再読が必要な長編である。

とはいえ、個人的にはそれほど感心しなかった。原文はどうだかわからないが、いかにも劇作家が書きそうな小説であり、作品のリズムがどうも戯曲に近い感じがする。それが自分には合わないのかもしれない。再読すればもっと違った評価があるのだとは思うが。

 この作品を正しく評価するのなら、最低二回は読んだ方がいい。一回しか読んでいない自分には、この作品について語る資格はないのだろう。