- 作者: 曽根圭介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/08/10
- メディア: 単行本
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第53回江戸川乱歩賞受賞作。
今回の乱歩賞は、公安刑事もの。昔からある題材とはいえ、現在の社会情勢を踏まえて作り上げた設定は悪くないし、登場人物もそれぞれ個性的。主人公の不破よりも五味や若林といった脇役のほうに存在感があるのは、たぶん作者の計算だろう。特にマンボウが出てくるシーンは秀逸。描写や言葉を控えめにしつつ、それでいて必要な情報はしっかりと伝わるようにしてある筆運びも悪くない。ただ、面白かったかといわれたら、今ひとつというところか。悪くはないと思うが、物足りなさが残る。
選評で綾辻行人が書いていたが、「後出しじゃんけん」的なところがどうもひっかかるのだ。引っかかる大きな原因は、特に主人公の素直さにある。一匹狼を気取る(五味のチームに入らないという点で)わりに、人を簡単に信用しているところが、公安刑事としては少々難があるのではないか。不破がもっとしっかりしていれば、事件は全く別の面を迎えていただろう。自分がイメージする公安刑事とのギャップが、都合よい展開も含めて、腹立たしくもある。
たぶん作者は、書ける実力のある人だろう。題材の料理方法も悪くない。ただ、3割バッターになる実力はあるが、大ヒットを飛ばすタイプではない。その印象を覆すことができるか。