平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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東野圭吾『たぶん最後の御挨拶』(文藝春秋)

たぶん最後の御挨拶

たぶん最後の御挨拶

東野圭吾5冊目のエッセイ集。年譜、自作解説など、現時点における東野圭吾の総決算、といった趣のエッセイ集である。

年譜や自作解説などを読むと、読者と作者の間、そして作者と書評家の間って大きな溝があるんだなと感じてしまう。作者の自信作がまったく評価されなかったり、軽い気持で書いた作品が評判になったり。まあ、全てが作者の思い通りに事が進んだら、全ての作品がベストセラーになるわけなんだが。

このエッセイを読むと、どこか客観的で冷めた視線で自分を見つめている東野圭吾がうっすらと見えてくる。文学賞に落選してがっかりしているのは確かだろう。受賞して喜んでいるのも確かだろう。編集者や仲間たちから祝福されて喜んでいるのも真実だろう。それでもどこか、遠くから自分を見つめているのが東野圭吾という人物のように思えるし、だからこそあれだけの作品が書けるんだろうと思ってしまう。

自作解説以外にも、収録されたエッセイはどれも面白い。本人はタイトル通り、これが最後のエッセイ集だと書いているが、何とも勿体ない話だ。