- 作者: 小川勝己
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/10
- メディア: 単行本
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中学最後の春、東京からの転校生でクラスの人気者だった桑島佳史が無惨な姿で発見された。しかも、犠牲者たちの下半身は、村の伝承をなぞるように、噛み切られたかの如き傷跡を残して消え失せている。やがて一連の出来事は、三十年前の忌まわしい事件と同じ様相を呈し始めた。(粗筋紹介より引用)
小川勝己といえばクライムノベルの作家というイメージしかなかったので、2002年にこの“探偵小説”が出版されたときも、大したことはないだろうという思いしかなかった。しかし今頃になって読んでみると、骨太の本格探偵小説に仕上がっているので驚いた。狭い村ならではの複雑な人間関係。伝説通りの見立て殺人。しかも探偵役は風采の上がらない変人。これで密室などの大トリックでもあれば、横溝正史の平成版といえただろうに。まあ、そこまで望むのは贅沢か。
主人公が中学生ということもあり、青春ミステリとしての側面をもっている。帯に書かれた「子供の時間は終わりを告げた」の言葉通り、大人に上るステップを駆け昇ろうとする子供たち(中学生を子供と書くのは少々違和感があるけれど)の姿が生き生きと描かれている。まあ、ステップにしてはかなりハードな内容ではあったが。
子供たちの描写と村社会の描写のどちらをもじっくりと書き込んだせいか、少々長くなってしまい、間延びしてしまった感はあるが、作品はなかなかのもの。できればもう一度、このような探偵小説を読んでみたい。