平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

笹本稜平『転生 越境捜査』(双葉社)

 

転生-越境捜査-

転生-越境捜査-

 

 消費者金融最大手マキオスの会長に君臨する槙村尚孝は、かつて一緒に空き巣を働いていた原口敏夫という男で、本当の槙村は三十年前に原口によって殺された――。葛西と名乗る老人の告白を神奈川県警の宮野が聞きつけた直後、豪徳寺の空き家の床下から古い白骨死体が発見される。警視庁捜査一課の鷺沼友哉は、その真相追究に乗り出すが……。大人気「越境捜査」シリーズの第7弾。(粗筋紹介より引用)
 『小説推理』2017年12月号~2018年12月号連載。加筆訂正の上、2019年4月、単行本刊行。

 

 警視庁捜査一課特命捜査対策室特命捜査第二係の鷺沼友哉と神奈川県警瀬谷警察署の不良刑事、宮野裕之のコンビたちが挑むシリーズ第7作。今回は急成長を遂げた消費者金融会社会長の正体を探る。レギュラーである三好章係長、井上拓海巡査部長、山中彩香巡査、元やくざの福富といった面々も活躍する。
 今まで警察組織や公安、政治家など大物ばかりと対峙してきたが、今回は最大手とはいえ一企業の会長。ややスケールダウンした感は否めないが、さすがに同じような相手ばかりを書くわけにもいかなかっただろう。
 今回は組織的な妨害が少ない分、すんなりと事件に対峙できそうなものだが、時間の壁が立ちはだかる。やや地味な展開だが、読みごたえはあった。しかし、おなじみのメンバーによるおなじみの展開は、安心感と同時にマンネリ感が漂う。予定調和から一歩もはみ出していないというのは、読み終わった後何も残らないということにもつながる。この点をどう考えるか、だろう。
 なんだかんだ言いながら好きだから読んでいるシリーズだが、そろそろ潮時だろうか。

犯罪の世界を漂う

http://hyouhakudanna.bufsiz.jp/climb.html

無期懲役判決リスト 2019年度」に1件追加。

 船橋市の生き埋め事件で、元少女被告の無期懲役が確定。捕まったのが18歳。現在22歳。仮釈放になるのは、早くても50歳代。何を思ってこれから生きていくのだろう。絶望しか浮かんでこないのだが。

 そうやって考えると、無期懲役というのも過酷な刑なんだろうな。もちろん、殺されたほうからみたら、こんな刑でも許さないだろうが。

『お笑いスター誕生!!』の世界を漂う

http://hyouhakudanna.bufsiz.jp/star.html

お笑いスター誕生!!」新規情報を追加。

 横山たかし師匠が亡くなられました。数年前から車いすに座っての漫才ではありましたが、ほら吹き漫才は健在でした。横山たかし・ひろしがお笑いスタ誕に出ていたというのは、さすがに記事には載っていないですね。なぜ当時出演したか、どこかに書かれているんでしょうか。一度聞いてみたかったです。ご冥福をお祈りします。

C・デイリー・キング『空のオベリスト』(国書刊行会 世界探偵小説全集21)

 

空のオベリスト 世界探偵小説全集(21)

空のオベリスト 世界探偵小説全集(21)

 

  「4月13日正午、おまえは死ぬ」 国務長官の緊急手術に向かう著名な外科医カッター博士に送り付けられた不気味な犯行予告。ニューヨーク市警の敏腕刑事ロード警部は、あらゆる事態を想定して護衛にあたったが、ニューヨークを飛び立って数時間後、その目の前で博士は倒れた――。上空数千フィート、空の密室ともいうべき飛行機の中で、果たして何が起きたのか。エピローグを巻頭に配した構成。手がかり索引など、様々な技巧を駆使し、フェアプレイを掲げて読者に挑戦する、パズラー黄金期の旗手キングの幻の名作。(粗筋紹介より引用)
 1935年、発表。1997年12月、邦訳刊行。

 

 黄金期のアメリカ本格を代表する作家であるキングの幻の名作。オベリストというのは作者の造語で、「疑問を抱く人」という意味である。
 飛行機の中で起きた殺人事件。まさに空の密室。しかし警護に当たっていたロード警部は、登場人物=容疑者の分単位の行動を探し回るだけ。本当に分刻みでアリバイ探しをしているので、読んでいて鬱陶しくなってくる。人間関係に動きがあるから、退屈はしないけれど。そしてようやく見つけた真相は……、ということで見事に背負い投げをくらわされる。まあ何とも皮肉な本格ミステリ。最初にエピローグを置き、最後にプロローグを置く構成の理由がようやくわかる。巻末にある「手がかり索引」も含め、パズル好きなら喜びそうな作品。
 うーん、どう言えばいいのだろう。なんだよこれ、と言いたいのが本音かな。よく考えたな、と思わせる作品であることは間違いないけれど、小説として読んだ場合、どう感想を書けばいいのだろうかと戸惑ってしまう。本格ミステリにおける技巧の到達点の一つかな、とは思ってしまうが、手がかり索引なんて読みにくいというのが正直なところ。これを小説中にうまく入れ込めよ、と言いたい。