平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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志水辰夫『深夜ふたたび』(徳間文庫)

深夜ふたたび (徳間文庫)

深夜ふたたび (徳間文庫)

かつてベトナムの逃亡米兵を国外脱出させた川久保は、極秘依頼を受けた。新型レーダーの機密データを持つ元自衛官を、潜伏先の京都から根室を経て、ソ連に渡してほしいというのだ。警察と謎の一団による追撃を振り切って、一路、北上をつづけた川久保と男だったが、函館到着と同時に、逃亡計画は中止された。なぜだ!?

二転三転する敵と味方。罠と裏切りの荒野に、男の孤絶の闘いがつづく。圧倒の冒険長篇。(粗筋紹介より引用)

1989年5月、徳間書店より単行本刊行。1993年6月、文庫化。



タイトルから内容まで、冒険小説の傑作、ギャビン・ライアル『深夜プラス1』のオマージュ。日本に移植したらこうなりますよ、といった作品である。広いアメリカと、狭い日本を比べるまでもなく、スケールが小さくなるのはわかりきったこと。それでもやはり、今一つ感があるのは拭えない。

逃走ルートを車で走ったことがある人には、色々と思いださせるものがあるのかもしれないけれど、それ以外の人にとっては、あまりリアリティが感じられない。いや、描写が優れているのは分かるのだが、どこか想像上の出来事にしか見えず(いや、想像なんだけど)、それほど緊迫感も伝わってこない。

何も無理してオマージュしなくても、と思わせる一冊。逆に『深夜プラス1』を呼んでいない人の方が、面白がるかもしれない。