平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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青崎有吾『水族館の殺人』(東京創元社)

水族館の殺人

水族館の殺人

夏休みも中盤に突入し、向坂香織たち風ヶ丘高校新聞部の面々は、「風ヶ丘タイムズ」の取材で市内の穴場水族館である、丸美水族館に繰り出した。館内を館長の案内で取材していると、サメの巨大水槽の前で、驚愕のシーンを目撃。な、なんとサメが飼育員に喰ついている! 駆けつけた神奈川県警の仙堂と袴田が関係者に事情聴取していくと、容疑者11人に強固なアリバイが……。仙堂と袴田は、仕方なく柚乃へと連絡を取った。あのアニメオタクの駄目人間・裏染天馬を呼び出してもらうために。平成のエラリー・クイーンが贈る、長編本格推理。好評〈裏染シリーズ〉最新作。(粗筋紹介より引用)

2013年8月刊行。



鮎川賞を取った『体育館の殺人』に続くシリーズ2作目。『2014本格ミステリ・ベスト10』(原書房)で国内編第2位ということもあり、とりあえず手に取ってみた。といっても、ここ最近はこのベスト10にほとんど興味ないけれど(苦笑)。

事件から1日も経たないうちに仙堂警部たちが裏染天馬を呼び出すのはどうかと思うが、そこからの展開はまあ悪くない。裏染の家庭の事情や、袴田柚乃の活躍ぶり(スクール水着になったり、カップルにされたり、着替えを裏染妹に覗かれたり)など、単なる推理パズルにならないようなキャラの動きを用意しているところは好印象。アリバイトリックはともかく、全員にアリバイがある展開から一転してアリバイがだれにもないというひっくり返しは楽しめたし、モップとバケツと水滴と足跡から容疑者たちを次々と消去していく推理も面白かった。まあ、分刻みの行動の記憶力や、あそこでモップを使うか、などの突っ込みは野暮なのだろう(個人的な評価は落ちるけれど)。

本作品の一番よかったところは、なぜこのような殺人を行ったのかというところが明解にされているところかな。はっきり言って後味が悪いものではあったし、そもそも水族館が閉館になったらどうしていたのだろうという疑問はあったのだが。

シリーズものという点を差し引いても、第1作より出来はよい。推理部分だけではなく、キャラクターの部分でも楽しめるようになっている。本格ミステリ大賞の候補になるだけのことはあると思った。

どうでもいいが、アニメネタが一部古すぎるのはどうにかならないか。