- 作者: 青崎有吾
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2012/10/11
- メディア: 単行本
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2012年、第22回鮎川哲也賞受賞作。同年10月刊行。
タイトルは綾辻行人の「館」シリーズを意識したもの。「クイーンを彷彿させる論理展開」とあるが、とある物と現場に残された黒い傘を基に一つずつ検証していって可能性を潰し、ロジックを展開してただひとり残された犯人を導き出すところはなかなかの迫力。ただ選評でも指摘されているとおり、その推理展開が粗く、本来考えるべき所を簡単に切り捨ててしまっているのは問題だと思う。面白ければいいや、という人にはそれほど気にならないだろうが。
小説自体は確かに読みやすいのだが、人気のある生徒が殺されたわりには動揺している学生がほとんどいないというのはどうかと思う。特に同じ放送部員が、あそこまで冷静に語れるとは思えない。普通だったら親も騒ぎ立てるだろう。警察に反発する学生もいないしなあ。本当に高校生か、君たち。さらにこの動機はちょっと軽すぎるんじゃないか。まあ、現実でもこんなことで、という動機があるから有り得ないとは言わないが。ただ、エピローグは不要だった。あれのおかげで、動機や行動そのものがおかしくなったことに気付かないのか、作者は。
それと、依頼を受ける動機と、時々発せられる言動ぐらいしかアニメオタクの設定が生かされていないのは残念。服装もコスプレをするとか、ミス・マープルみたいにトリックや登場人物の動きをアニメに置き換えて説明するとかしてくれないと面白くない(それはそれで結構引きそうだが)。
個人的に言えば、悪くはないのだが、どれもこれも今一歩。鮎川賞受賞ならこれでもいいかもしれないが、シリーズ化を意識したような書き方は好きになれない。