平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ジョン・グリシャム『依頼人』(新潮社)

依頼人

依頼人

11歳の少年マーク・スウェイと弟のリッキーは、マフィアのお抱え弁護士、ジェローム・クリフォードが排ガス自殺しようとする現場に遭遇する。マークはホースを抜き取ったがクリフォードに見つかり、車の中に連れ込まれる。クリフォードはピストル自殺をしたが、マークは逃げる直前に、ニューオリンズ・マフィアのバリー・マルダーノが殺害したボイド・ボイエット上院議員の死体の隠し場所を打ち明けられてしまう。リッキーはショックで言葉を失い、そのまま入院。野心家のロイ・フォルトリッグ検事は上院議員殺害事件の犯人がマルダーノであることを立証するために死体を見つけようと、FBIを動かしてマークの口を割らせようとする。さらにマフィアもマークに脅しをかけてきた。マークはたまたま立ち入った法律事務所の女性弁護士、レジー・ラブを1ドルで雇い、助けを求める。

1993年3月、アメリカで刊行されると同時にベストセラーの1位に。1993年12月、翻訳。



ベストセラーとなった作品で、相当昔に買っていたものを今頃読む。まあ、よくある話だ。

11歳の依頼人と女性弁護士がFBIやマフィアを相手に立ち回るというのは、帯に書いているとおりのグリシャム的世界。場面の切り替えとテンポが速く、読者に考える間を与えず、自らの世界に読者を引きずり込むのは、他の作品と変わらない。よくよく考えるととんでもない話なのだが、こんな展開と結末が成立してしまうのもアメリカならではか。「証人保護プログラム」や「アメリカ合衆国憲法修正第五条」などをよく把握しないと、この作品の行動原理が今一つつかみ難いところがある(そもそも遺体が無い段階で裁判に入ってしまうのも恐ろしい)のだが、荒唐無稽な個所すらも置いてけぼりにしてノンストップで読める作品でもある。

面白いといえば面白いし、下手に考える間もなく読めるからベストセラーになるのもわからないではないが、釈然としないものが残ることも確か。ぶっちゃけて言ってしまえば、ガキにいい大人が振り回されすぎ。物語だと割り切って読むから、別にいいけれど。