- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/02/24
- メディア: コミック
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すっかり落ちぶれてしまった漫画家の納戸理人(なんどりひと)。ゴルフコンペでホールインワンを出してしまい、心臓マヒで死亡。そして理人は、上京した過去に戻る。実は理人は、上京からホールインワンを出すまで、何度も同じ歴史を繰り返していた。ところが理人はあるとき、その事実に気付く。記憶をもったまま過去に戻った理人は、今度こそ幸せな人生を掴もうとする「未来の想い出」。『ビッグコミック』1991年6月10日号〜8月25日号連載。
藤子Fでは珍しい、というよりこれしかない、青年誌連載作品2つ。ペーソスあふれる佳作である『中年スーパーマン左江内氏』と、藤子F版「まんが道」とも呼ばれた『未来の想い出』。毛色の違う2作品であるが、並べて読むとやっぱりこれは藤子F作品だと思わせるのは、絵柄だけではなく、作中に流れる温かさと言えるだろうか。『中年スーパーマン左江内氏』の最後で成長したパーやんが出てくるのは、作者らしいサービスなのだろうが、『未来の想い出』では理人の授賞式にトキワ荘メンバー(藤子F、藤子A、石森、赤塚、つのだ)が登場するのはサービスではなくて、別の感情があったのだという気がする。この作品から5年後に亡くなったことを考えると、何かを暗示しているのではないかと思うのは気のせいだろうか。それと『未来の想い出』で今頃気づいたのは、最後の爆発事故の伏線がきちんと張ってあったこと。何げない描き方をしても、細部まで計算されているのは、集中連載とはいえさすがだ。
やはり藤子Fには児童物がふさわしいと思うのだが、あと何本かは長編も読んでみたかった気がする。