- 作者: 大倉崇裕
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/12/12
- メディア: 文庫
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『ミステリーズ!』Vol.12〜15に掲載された短編4本を集め、2006年6月に単行本として発売された短編集。2008年12月、文庫化。
『刑事コロンボ』をこよなく愛し、ノベライゼーションも出している作者が、コロンボの手法を用いて執筆したシリーズ。主人公は名字と容姿以外がわからない女性警部補、福家(ふくいえ)。刑事に見えない姿や、いつの間にか犯人の側まで接近しているというのはコロンボと同じ……なんだろうなあ。実はコロンボも古畑も見たことがないので、よくわからないんだが(苦笑)。
犯人の視点から犯行を描き、その後捜査担当者が徐々に真相に迫り、思いもよらない犯人のミスを指摘して逮捕するという姿は、スタンダードすぎるほどスタンダードな倒叙形式の本格ミステリである。本作はいずれもその形式を踏襲しているので、倒叙ファンとしては実に嬉しい。正直なことを言えば、手がかりの出し方が少々露骨すぎる気がしないでもない。推理というよりは、なんとなくだけど違和感を覚えるようなところがだいたい犯人のミスに繋がっている程度の話なんだが。
このシリーズの欠点と言えば、本来その長所ともいうべきところ。形式がいつも同じなので、中身はどうあれ、「ああ、こうなるんだろうなあ……」と思わせてしまうところである。いってしまえばワンパターンであり、さらに福家の存在感が希薄であることから、課題はそのパターンを超えるべき犯行、もしくは登場人物を出すことができるかどうか。ということで次作に期待したい。いや、続編が単行本で出ていることは知っているんだけど。