平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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伊坂幸太郎『砂漠』(実業之日本社 Jノベル・コレクション)

砂漠 (Jノベル・コレクション)

砂漠 (Jノベル・コレクション)

仙台の大学に入学した5人の大学生、北村、南、東堂、西嶋、鳥井。一人暮らし、合コン、恋人、勉強などの学生生活を、社会という砂漠に囲まれた大学というオアシスで送ってゆく。途中で遭遇するいくつかの事件。ホストとのボーリング賭勝負、プレジデントマンによる連続強盗、連続空き巣事件、大学祭での超能力イベント等々。季節は春、夏、秋、冬と過ぎてゆく。

2005年、書き下ろしで刊行。2008年、新書化。



大学生活を伊坂らしい描き方で記した一冊、とでも書けばよいのであろうか。もっとも、何をもって「伊坂らしい」と呼べばいいのか、私にはさっぱりわからないが。

クールを身にまとう北村、他人とはちょっと違った感覚で熱くなる西嶋、女性好きの鳥井。そして美人の東堂に、癒し系でちょっとした超能力を持つ南。まあ、大学時代にこんな人たちいたよな、とか、いればよかったな、というキャラの配置。当たり前で平凡のような日常に、当たり前でない、しかし新聞の片隅にちょこっとだけ載るような事件との遭遇。まあ、それだけだね。どうでもいいけれど、最後の仕掛け、無意味だろ。

昔を思い出しながら、したり顔で大学生や大学生活を語っただけの小説。そしてそれをわかったようなふりをして、昔を思い出したり憧れたりしながらこの本を手に取る読者たち。誰も彼もがわかったようなふりをするための小説。なんか、蜃気楼みたいなイメージの小説だね。遠くから見ると美しそうだが、全くつかみ所がない。こんなことを書く自分が、この小説の面白さを全くわかっていないのだろう。書き方がイヤらしくて、好きになれない。何がイヤらしいのかすらさっぱりわからないけれど。