- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/03/05
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 129回
- この商品を含むブログ (371件) を見る
「週刊現代」2006年9月16日号〜2007年9月15日号連載。2008年3月刊行。
東野圭吾の新刊は復讐サスペンスもの。これだけの古典的な道具立てで、なぜ面白いストーリーを書くことができるのか、素直に尊敬してしまう。お涙頂戴の大時代な筋立てであるし、設定が現代というだけで特にエッセンスを加味しているようにも思えないのに、ページをめくる手が止まらないというのは、作者の実力以外の何ものでもない。
結末になるにつれ、展開がスピードアップしすぎるところと、少々都合よすぎるところが気になるが、いずれにしてもエンターテイメントとしては一級品である。もっとも、後に残ることはないだろうが。読んで面白く、誰かに語った後は忘れてしまう、そういう面白さである。多分作者の狙いもそんなところだろう。東野圭吾だったら、3人の心理面を深く掘り下げることも可能だっただろうが、面白さに徹することで、余韻をあえて犠牲にしたのである。