平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

東野圭吾『流星の絆』(講談社)

流星の絆

流星の絆

流星群を見に家を抜け出した功一、泰輔、静奈の兄妹を待ち受けていたのは、洋食屋である両親の殺された姿だった。捕まらぬ犯人に、復讐を誓う3人。そして14年後、詐欺集団となっていた3人が最後のターゲットを選んだとき、泰輔は事件当日目撃した男を見つけた。功一は綿密な復習計画を立てるが、ある誤算が生じてしまった。

週刊現代」2006年9月16日号〜2007年9月15日号連載。2008年3月刊行。



東野圭吾の新刊は復讐サスペンスもの。これだけの古典的な道具立てで、なぜ面白いストーリーを書くことができるのか、素直に尊敬してしまう。お涙頂戴の大時代な筋立てであるし、設定が現代というだけで特にエッセンスを加味しているようにも思えないのに、ページをめくる手が止まらないというのは、作者の実力以外の何ものでもない。

結末になるにつれ、展開がスピードアップしすぎるところと、少々都合よすぎるところが気になるが、いずれにしてもエンターテイメントとしては一級品である。もっとも、後に残ることはないだろうが。読んで面白く、誰かに語った後は忘れてしまう、そういう面白さである。多分作者の狙いもそんなところだろう。東野圭吾だったら、3人の心理面を深く掘り下げることも可能だっただろうが、面白さに徹することで、余韻をあえて犠牲にしたのである。