平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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クレイグ・トーマス『闇の奥へ』上下(扶桑社ミステリー文庫)

闇の奥へ〈上〉 (扶桑社ミステリー)

闇の奥へ〈上〉 (扶桑社ミステリー)

闇の奥へ〈下〉 (扶桑社ミステリー)

闇の奥へ〈下〉 (扶桑社ミステリー)

SIS長官ケネス・オーブリーは二年ほど前からKGB副議長カプースティンとヨーロッパ各地で秘密裡に接触を重ねていた。カプースティンから亡命の希望が寄せられ、二人はその条件や手はずを話し合っていたのだ。接触は組織を離れた個人的なもので、カプースティンはつねに独り、オーブリーのほうも工作員のハイドを随行させただけだった。ところが、話も煮詰まった冬のウィーンでの接触で、KGBの副議長は不意に亡命の意思を翻した。その直後、オーブリーはソ連のスパイとしてバビントン率いるMI5に逮捕されてしまう。<涙のしずく>というコードネームを持つソ連のスパイである、というのが彼に着せられた容疑だった。あやういところで、逮捕をまぬがれた部下のハイドは、敵味方の両組織から命をねらわれながら、オーブリー逮捕の手懸りを求め、救出にのりだした。(上巻 粗筋紹介より引用)

オーブリー逮捕劇の真相とは? ウィーンのKGB駐在官を拉致したハイドは、その男から驚くべき人物の名前を聞き出した。ペトルーニン。オーブリーのために大失態を演じ、アフガニスタンに左遷されたKGBの大佐だ。今回の<涙のしずく>作戦はペトルーニンが考案した謀略だというのだ。KGB上層部は彼をアフガニスタンへ追いやりながらも、その計画だけは取り上げ、いまそれを実行に移したのだ。だが、計画の全貌は発案者のペトルーニン本人から聞き出さなければならない。ハイドは宿敵を求めて単身、戦乱のアフガニスタンへ飛んだ。

繊細な野獣に変身した工作員ハイドが、駆け、吠え、襲い、逃げ、殺し、恐怖に身を震わせ、苦痛に身をよじり、ウィーン、アフガニスタンチェコスロヴァキアと、地獄のなかを疾走する。(下巻 粗筋紹介より引用)

1985年、“Bear's Tears”のタイトルで英国にて出版。1989年、日本で翻訳される。



映画化された『ファイアフォックス』で作者名は知っていたが、読むのは初めて。作者の10冊目とのこと。訳者あとがきで「お馴染みの面々が顔をそろえる」とある。オーブリーは確かレギュラーだが、ハイドもそうなのかな。まあ、その辺を知らなくとも十分読むことができるけれども、知っていた方がもうちょっと楽しめたかも知れない。

オーブリーが拘束され、ハイドが逃走してからは息つく間もないシーンの連続。逃走中の銃撃シーン、アフガニスタンでの大暴れなど、これでもかとばかりの活劇が続く。ハイドに都合が良すぎれる展開が多いものの、そういうハードなアクションを求める読者にとっては十分満足のいくものだろう。

ただ、これだけ綿密な計画を立てているくせに、罠を仕掛けた方が間抜けに見えてしまうのはどうだろう。都合良すぎる展開そのものもそうなのだが、普通だったらもっと防御しているだろうと言いたくなるのは確か。まあ、その辺のご都合主義も冒険小説には欠かせないところだが(凄い偏見かも)。

まあ、退屈することなく読むことができました。ただ、それ以上のものはなし。
これだけの作品で、この程度の感想しか書けないところに、自分の感受性がかなり落ちていることを認識する。