- 作者: 山口雅也
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/09
- メディア: 単行本
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作家として成功したモルグ氏の家に次々と訪れる客と不幸。「モルグ氏の素晴らしきクリスマス・イヴ」。
少年が目撃した、異星人による殺人事件。しかしその真相は。「『次号に続く』」。
メイドは女優志願。そのことを主人である女優に叱責される。女優は昔、メイドのような目を見たことがあったが……。「女優志願」。
ハリウッドの大物プロデューサーが見せられた、素人映画監督の作品とは。「エド・ウッドの主題による変奏曲―あるいは『原子プードルの逆襲(The Revenge of the Atomic Poodle Dog)』」。
団地で頻発する幼児墜落死事件。ある不気味な出来事に気付いた主人公。「割れた卵のような」。
作家が15年ぶりに再会する友人は、アンティーク・ドールハウスではヨーロッパ一の蒐集家だった。「人形の館の館」。
「オール讀物」「小説non」「メフィスト」「小説新潮」に掲載された短編を収録。『ミステリーズ』の姉妹編。1998年発売。
新刊で買って今頃読む。体に馴染みきった、いつものフレーズである。
単行本ではそれぞれの節に分かれており、「孤独の島の島」「モルグ氏の素晴らしきクリスマス・イヴ」「『次号に続く』」が「I
『ミステリーズ』が本格ミステリの先鋭的な短編集だったとすれば、『マニアックス』はどちらかといえばホラーチックなサスペンス作品がほとんどである。
山口雅也だから、何か仕掛けてくるかと思っていたが、中身は思ったより普通に仕上がっていた。扱っている主題にはらしさが漂っているが、すっきり読みやすいし、後口も悪くない。ひねくれ度はほとんどないと言っていい。
「後口すっきり、洗練度アップ」ということを逆に表現するなら、読んだ後は何も残らない。出てくる主人公は面白い人物が多いので、もっと書き込んだら凄い作品ができそうだが、これをさらっと流すところが巧いんだと思う。
お薦めするなら「人形の館の館」。山口らしい皮肉な視点が、今(執筆当時)の本格ミステリらしさを漂わせている。
だけど、「嘘は書いてないよ」ではなく、「すべて見せていますよ」という本格ミステリを待ち焦がれている自分がいる。「すべて見せている」ふりをする本格ミステリに今のところ用はない。