- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2002/09
- メディア: 単行本
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (35件) を見る
幸い、興業はそこそこの当たりをおさめ、小平次の幽霊の演技も好評であった。しかし、この興業にはある裏があった。
山東京伝の『復讐奇談安積沼』を題材とし、現代に甦らせた京極怪談書き下ろしの一冊。第16回山本周五郎賞受賞作。
新刊で買って今頃読むシリーズ(ってなんのこっちゃ)。
京極夏彦が江戸時代の怪談を新たに調理し直した、『嗤う伊右衛門』に続く一冊。申し訳ないのは、肝心の『復讐奇談安積沼』を知らないことである。巻末にある関連文献を読むと、小平次を扱った怪談は他の作家も書いているようなので、結構有名なのかも知れない。
生きているか死んでいるかどうかもわからない幽霊役者小平次と、嫌悪しながらも分かれようとしない妻お塚。二人をとりまく様々な人物の思惑と思いを巻き込み、不気味な愛憎劇を繰り広げることとなる。怖いのは死者か生者か。
凄惨なラストシーンの後に流れる静寂が、かえって不気味さを増す。怪談を書かせれば、天下一品の作者だろう。できれば、現代流の怪談落語を書いてもらいたいところだが。