平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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天童荒太『孤独の歌声』(新潮文庫)

孤独の歌声 (新潮文庫)

孤独の歌声 (新潮文庫)

ひとり暮らしの女性たちが次々と誘拐され、哀れな末路を迎えていた。糸口すらつかめぬ警察。朝山風希刑事は、別件を担当中にもかかわらず、この連続殺人を追う。封印したはずの過去が、事件へと向かわせたのだ。だが、その最中、隣室に住む風希の友人が行方不明になってしまった。孤独は煉獄の炎のごとく、人をあぶり続けるものなのか―――。天童荒太という名の伝説は、本書から始まる。(粗筋紹介より引用)

1993年、第六回日本推理サスペンス大賞優秀作受賞作品を文庫化にともない大幅に加筆訂正。



深夜のコンビニエンス・ストアでアルバイトをしながら歌い続ける「おれ」。コンビニ連続強盗事件を担当しながら、女性猟奇連続殺人事件を追う婦人警官の「わたし」、そして連続殺人犯の「彼」。この三人が主人公。

主人公たちが自分の心にある暗闇の部分を吐き続けるというのは、後の作品と変わらない。“孤独の歌声”というキーワードは物語でうまく使われていると思う。ただ、なんとなくもやもやしたまま終わってしまうのが残念。闇の部分が強すぎて、物語に悪影響を及ぼしている感がある。登場人物たちの思いが強すぎて、読んでいるほうも疲れてしまう。

それにしても、この既視感は何だろうか。どこかで読んだことがあるような記憶はあるのだが、それが何なのか思い出せない。もどかしさばかりが心に残る。