平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

久住四季『トリックスターズM』(電撃文庫)

トリックスターズM (電撃文庫)

トリックスターズM (電撃文庫)

天乃原周がまどろみで見た夢、それは予知夢であった。仮面を付け、法衣を着た人物が男性が襲いかかる。仮面を外した顔に、見覚えはない。その夢は誰が見た夢なのか。経験上からいえば、ごく近しい人物。城翠大学教授で、魔術師でもある佐杏冴奈ゼミの元ゼミ生5人の中の誰かである可能性が高い。未来視とは、確定した未来を見る力。周はそんな未来を変えようと動き出す。一体、被害者は誰なのか。いつ、どこで襲われるのか。城翠大学学園祭2日目。推理小説研究会、被服研究会、MIDの三サークル合同企画「マスカレイド」がその舞台。

人気シリーズ「トリックスターズ」第4作目。



作者紹介に「あ、そうか!」「わ、やられた!」「え、そんなのってあり!?」という類の裏切られる痛みが大好きな著者が放つ渾身の四作目……と書いている。確かに今までの作品はいい意味でいい意味で裏切られることが多かったが、今回は悪い意味で裏切られた。「犯人はわかっている。問題は“いつ”“どこ”で“誰”が被害者かだ」とある帯の言葉は大いにそそるのだが、その謎が単純すぎるというのが残念。「マスカレイド」という舞台そのものの設定も面白いのに、隠された謎そのものはアッという間に解かれてしまうし、本筋とは少々かけ離れたところにしかないというのも、本作品でがっかりした要素の一つである。設定や小道具を見る限りでは面白くなりそうなのに、料理が失敗したというのは勿体ない。

まあ、祭りはもう一日あるらしいので、それには付き合ってみようと思う。