平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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どうしてこういう書き方をするのかな

死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム'90(以下、フォーラム90と略します)のホームページより、9月8日に更新されていた「響かせ合おう 死刑廃止の声 2006へ」から一部引用。

 今年9月1日までに9人の上告が棄却され死刑確定囚は89人になっています。フォーラムで把握しているだけでも最高裁で口頭弁論が入っている方、あるいは近々予定されている方が6人おり、年内に確定死刑囚が90人を超えそうです。5年前は54人だったことを考えるとこの急激な増加は異常としかいえません。昨年10月の木曽川長良川事件で名古屋高裁は、一審死刑1名無期2名判決を破棄し、被告の少年3名全員に死刑判決を出しましたが、この背景には極刑を望む被害者遺族の意見陳述とマスメディアの報道を受けて重罰化に走る裁判所の姿がありました。また光市の最高裁判決 も、被害者遺族の報復感情と死刑をあおるマスコミに流され、事実を審理しようとはせずに、死刑を求める差戻判決を出しています。
 社会総体がリンチを求める時代になっています。このことは言うまでもなく、日本経済の破綻、戦後体制の終焉と戦争国家化が背景にあります。行き場のない焦燥感のはけ口が、殺せの大合唱に集約され、マスメディアはそれを煽り増幅させ、死刑を求める殺伐とした空気をさらに蔓延させています。こうした時代が続く限り、市民の参加を謳い文句とした裁判員制度下の拙速裁判ではさらに死刑判決が増えるのは明らかでしょう。

ちなみに9月2日から年末までに判決から口頭弁論が入っていたのは、江東恒被告(7日に判決済)、久間三千年被告(8日に判決済)、石川恵子被告、朴日光被告、高橋義博被告、長勝久被告。確かに6人だ。ただ、フォーラム90の書き方だと、口頭弁論だけに限っていそうだから、もしかしたら他に3人ぐらい予定されている被告がいるのかも。まあ、あってもおかしくはないが。
さて、この引用文の中でも書かれているのだが、「極刑を望む被害者遺族の意見陳述とマスメディアの報道を受けて重罰化に走る裁判所の姿」という部分。確かに死刑確定囚の人数は一気に増えているし、重罰化の流れは高まっているのかもしれないが、むしろ今までの罰が低すぎた、という結論は出てこないのかな。それに「被害者遺族の報復感情」だって、ようやく被害者遺族が口にすることができるようになった、泣き寝入りしなくなった、というのが本当の背景だと思う。
「社会総体がリンチを求める時代」というのは、昔も今もそんなに変わらないと思うけれどね。マスコミ報道を見れば、一目瞭然でしょう。一度犯人視されたら、死ぬまで犯人扱いされていたんだよ、昔だって。ロス疑惑事件なんかいい例。あれをリンチと言わずして、なんと言うつもりか。
ましてや裁判員制度を拙速裁判と切り捨てるのもどうかな。色々問題はあるかも知れないけれど、少なくとも期日間整理手続きは、被害者遺族にとってもすぐに裁判の結果が出てくるから救われることが多いと思う。昨日判決が出た久間被告の事件みたいに、逮捕から裁判所の判決が出るまで12年もかかる方が問題だろうし、被害者遺族の苦労は相当なものだっただろう。
そういう事情を全く考慮せずに、何でもかんでも死刑反対に結びつけて「反対」と騒ぎ立てるやり方は疑問である。「死刑廃止」を訴えるのは結構だが、自らの主張と合わないものを何でも切り捨てる態度だけは避けてほしいと思う。
って、何回似たようなことを書いたかな。どうせ見ていないだろうけれど。一度くらいメールを送りつけてやりたくなるときがある。無駄だろうけれどね。