手塚治虫バカ一代 ―「幻のジャングル大帝」を覆刻した男・石川栄基の物語
- 作者: 司田武己,手塚プロダクション
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2004/02/26
- メディア: 単行本
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石川栄基はバンドマンを経て、京都で古紙回収業を始める。そのうち、「ちり紙交換」の方法を考案。一年も経たないうちに中古一トントラック10台を買い集め、従業員を雇う。三年後には月の売り上げ1000万円を超えるようになった。手塚ファンであった石川は、ちり紙交換で回収した古本の中にあった「おもしろブック」「少年」「冒険王」などのマンガ雑誌やマンガ本を集めるようになる。そして昭和50年、京都でマンガ専門の古本屋を開業した。
その後石川は手塚治虫ファンクラブ・京都を設立。会報「ヒョウタンツギタイムス」や復刻本を発行していく。手塚の死語、石川は「漫画少年」掲載版『ジャングル大帝』を復刻した。「黒人差別の会」などの抗議運動を跳ね返しながらである。
手塚治虫という男に魅せられた男の執念。本当に手塚バカ一代である。それだけの魅力が、手塚作品にはある。人生を賭けてもいい、そう思わせる魔法が。手塚ファンならずとも、この執念には恐れ入るだろう。一人のファンが、ここまでする事が出来るだろうか。帯にあるとおり、“手塚先生は僕の人生だった”という言葉が、全てを物語っている。人生そのものだからこそ、ここまですることが出来たのだ。一人の神様に魅入られた男の伝記、それが本書である。
本書にはもう一つの姿がある。マンガ専門古本屋の歴史だ。もちろん、石川が取り扱った古本屋のみのことであるが、粗である石川のことを語るのは、そのまま一つの歴史になるだろう。
巻末には手塚全集未収録の「大自然と空想」「空気のたらぬ國」「午后一時の怪談」の短編3本が載っている。これだけでも手塚ファンには貴重なはずだ。