平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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山川方夫『夏の葬列』(集英社文庫)

夏の葬列 (集英社文庫)

夏の葬列 (集英社文庫)

太平洋戦争末期の夏の日、海岸の小さな町が空襲された。あわてて逃げる少年をかばった少女は、銃撃されてしまう。少年は成長し、再びその思い出の地を訪れるが…。人生の残酷さと悲しさを鋭く描いた表題作ほか、代表的ショート・ショートと中篇を収録。(粗筋紹介より引用)

「夏の葬列」「待っている女」「お守り」「十三年」「朝のヨット」「他人の夏」「一人ぼっちのプレゼント」「煙突」「海岸公園」を収録。



山川方夫という作者を知ったのは、中学校時代の国語の教科書だった。収録されていたのは、本書の表題作である「夏の葬列」。教師に本作品の印象を聞かれ、私は「最後のどんでん返しがミステリ的だ」と答え、驚かれたのを覚えている。「夏の葬列」や「待っている女」は、1962年に「ヒッチコック・マガジン」に「親しい友人たち」と題するショートショートの連載作品である。巧妙な仕掛けとどんでん返しがあるのもなるほどと思ってしまった。

ただ、この人の代表的中編といわれている「海岸公園」はちょっと退屈で、読み続けるのがしんどかった。単に私の好みと合わなかっただけだとは思うが、この人の資質は、やはりショートショートだったのだろうか。