- 作者: 藤林愛夏
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 1989/10
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
第1回FNSミステリー大賞レディース・ミステリー特別賞受賞作。『殺人童話-北のお城のお姫様』を改題し、1989年10月、単行本化。
サントリーミステリー大賞→朝日放送、乱歩賞→フジテレビ、横溝賞→TBS、日本推理サスペンス大賞→日本テレビと、ほとんどのテレビ局が、ミステリの賞を映像化していた頃、いっそのこと自分たちで作っちゃえとやったのがFNSミステリー大賞。大賞、レディース・ミステリー特別賞、ヤング・ミステリー特別賞と3部門あり、選考委員もプロデューサーの岡田裕、映画監督の川島透、シナリオライターの竹山洋、そして中島河太郎と、映像端の方が多かったことも特徴であった。ところが集まった作品は低調で、いずれも2時間ドラマの脚本みたいな作品だったらしい。結局選ばれたのが、レディース・ミステリー特別賞の本作品である。
『ミステリマガジン』で新保博久(結城信孝だったかも知れない)が酷評していたことしか覚えていない作品だったが、本棚から見つけてしまったので読んでみることにした(自分でも買っていることを覚えていなかった)。うん、読み終わるまでが苦痛だった。
講評では「アクの強い文章」などと苦しい表現をしているが、要するに下手なだけ。描写も会話も独りよがりだし、さらに説明不足のところが多すぎるから、登場人物がどういう立場なのか、どういう位置付けなのか、どう考えているかなどが全然わからない。なんでこんな会話をしているんだろうと首をひねりながら読み続けて、後で説明がなされて前の会話の意味がわかるような書き方では、読む方が苦労するだけ。それに、主人公である後藤が、ただの優柔不断な中年男性でしかなく、どこにも魅力がないのにはまいった。
内容の方も今一つ。元々説明不足のところもあるが、事件そのものが中途半端。大邸宅を舞台にしているんだから、もう少し派手な事件を起こすべきだろう、ここは。事件の真相に辿り着く過程も、行き当たりばったりというか。トリックらしき物には首をひねるしかない。
とまあ、褒めるところが全く見当たらない。これが特別賞とはいえ受賞作なのだから、集まった作品はもっとレベルが低かったのかと思うと、選考委員や予選委員も相当苦労しただろう。
この賞、第2回からFNSレディース・ミステリー大賞と、女性だけを対象の賞に名前も変わり、選考委員も中島河太郎、夏樹静子、林真理子、山口洋子に変わってしまったが、発表結果もないまま消えてしまった。まあ、仕方がないだろうね、この結果じゃ。