- 作者: 藤子・F・不二雄,藤子不二雄A
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/08/25
- メディア: コミック
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「藤子不二雄ランド」で読んでいるのでストーリーは知っていたが、今回は完全復刻版ということで感動度は格別。鶴書房版は『開運! なんでも鑑定団』で300万円の価が付いており、日本の古書漫画でも一、二を争う高価な一冊である。全集でもラインナップされていたため、まさかここで復刻されるとは思わなかった。残念なのは、作者銘記が二人の連名になっていたこと。なぜ足塚不二雄じゃないのだろう。藤子・F・不二雄大全集を見ても、藤子Aのことには極力触れないようにしているから、多分藤子プロ側の意向と思われる。誰かが入れ知恵しているのかなあ……。藤子Aの『PARマンの情熱的な日々』等で、今でも安孫子が藤本のことを尊敬している言葉がこれでもかとばかり出てくるのとは大違いだ。
作品の方だが、昭和20年代とは思えない群衆劇。テーマも難解で、ヒーローによる単純明快な冒険ものなどが主力だったと思われるこの時代に、手塚の口添えがあったとはいえよく出版できたものだ。藤子Fの主導によるストーリーというのが定説だが、当時あっさり打ち切られた「四万年漂流」も含め、この時の藤子Fは、手塚治虫以上のSF、言ってしまえば初期三部作を超えるものを描こうと苦心していたのではないかとさえ思ってしまうぐらい、難しいテーマに挑んでいる。歴史が証明するように、この試みは失敗してしまう。以後藤子Fが一度も本格長編SFを描かなかったことは、漫画界にとってもSF界にとっても非常に悔やまれる出来事では無かっただろうか。
今回初めて読んだ「覆面団」は、手塚タッチで描かれた少年冒険もの。A国とB国の間で戦争をたくらむ団体が出てくるところなどは、いちおう、UTOPIAに近づけようとしたんだろうなあ、と思ってしまう。作者不詳だが、最後のドタバタぶりを除けばまあまあ読める作品だったと思う。プロが余技で描いたのだったらまだいいが、若手が描かされた挙句に名前すら載らなかったというのだったら、ちょっとかわいそう。