平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

免田栄『免田栄獄中ノート』(インパクト出版会)

免田栄 獄中ノート―私の見送った死刑囚たち

免田栄 獄中ノート―私の見送った死刑囚たち

日本初の再審無罪判決を受けた死刑囚である免田栄氏による著作。事件から再審無罪までについては過去の著作である『免田栄獄中記』『死刑囚の手記』『死刑囚の告白』などに書かれていることであるが、そのいずれもが既に絶版であることから改めて書いたのだろう。当時の捜査における拷問、不当裁判、再審が認められるまでの長い道のり、再審後などについての記録は、日本の裁判史、犯罪史における負の歴史として、長く語り継がれなければいけないものだからである。

それにしても、刑事補償が全額認められた折、「尾崎さん(尾崎陞弁護団団長)が3000万円寄付せよ、と言うている」と荒木哲也弁護士に渡したら、1500万円は日弁連から領収書が来たが、残り1500万円については荒木弁護菓子が熊本弁護士会の会長選出馬時の運動費にでも使ったのか、他の弁護士に費用は渡されていない、と『死刑囚の手記』に書いたら人権擁護委員長から告訴するというお叱りの手紙をもらった、というのには呆気に取られた(告訴はなかった)。人権、人権などと訴えても所詮弁護士も金次第か。本書には、日弁連の中には免田の救援に金ばかりかかるのではないか、という批判の声もあった、と書かれている。金に苦労する人権保護には手を出したくないというのが一部弁護士の本音なのだろう。

また、免田栄氏が死刑確定した翌年の1952年7月、福岡刑務所教育部は郷里の門徒明覚寺に処刑通告を促すとともに、免田氏の実家に火葬代700円位を請求。その後再審請求を提出したことから火葬代が800円に値上げになった旨も伝えている。恐ろしい話である。



本書で新しい部分といえば、5章の「刑場に消えた人々」だろうか。過去の著作を全て読んでいるわけではないので、詳細なところはわからないのだが。免田氏が直接別れの握手を交わし、見送った56名の死刑囚については、別頁に記載。