平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ジョン・D・マクドナルド『レモン色の戦慄』(角川文庫)

明け方の4時。<バスティッド・フラッシュ>号の警報ベルにマッギーは眠りを破られた。

転がりこんできたのは若い女だった。キャリー・ミリガン。6年前、レイプされかけたところを助けてやり、一度はベッドを共にしたこともある女だ。

髪振り乱した彼女は、茶色の包みを差しだした。9万2400ドルの札束だ。何も訊かずこれを一か月預かってほしい、保管料は1万ドル、と彼女は言った。マッギーは引きうけた。

2週間後、キャリーは死んだ。警察発表は交通事故だった。だが事実だろうか? あの大金には事件の臭いがあった…マッギーは相棒マイヤーと共に、愛艇をキャリーの眠るベイサイド市に向けた――(粗筋紹介より引用)

フロリダを舞台にしたトラヴィス・マッギーシリーズの16冊目の作品。1974年発表、1983年翻訳。



ラヴィス・マッギーといえば、愛する自家用ヨットを住まいとし、海岸で寂しいご婦人方のお相手をする“ビーチバム”として過ごしながら、ときにもめ事を処理するという程度のことは知っていたが、読むのは初めて。<バスティッド・フラッシュ>という名前は、ポーカーで大連勝したときに手にいれた船で、フラッシュくずれが由来であることは初めて知った。さらにメイヤーという相棒がいることも初めて知った。読んでみるものだな。

あとがきを読むと、「トラヴィス・マッギーは、ハメットのサム・スペードの足跡をたどる。これは荒々しくも魅力的なスリラーである………マクドナルドの文章はなめらかで、思わずハッとするようなすばらしさを随所に見せる」(ニューズウイーク)、「……マクドナルドは従来のサスペンス物のカテゴリーにおさまりきれない奔放さを発揮する」(ニューヨーク・タイムズ)とか書かれているんだけど、本当かな。魅力がどこにあるのか全然わからなかった。

江戸時代の渡り鳥が旅の途中で女に惚れられ、地元のヤクザと渡り合ううちにいつの間にかもめ事を解決し、結局女を捨てて次の宿場まで歩くような時代劇をアメリカで見せられた印象。日本を知らない外国人が時代劇を理解できないように、いかにもアメリカ的な人物、舞台を具体的な説明なしで語られても今一つ面白さが理解できない。単に自分が勉強不足ということだけだろうが。

ということで、自分には肌が合わなかった、理解できなかった。以上。