平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

松下龍之介『一次元の挿し木』(宝島社文庫)

 ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨。大学院で遺伝学を学ぶ七瀬(はるか)がDNA鑑定にかけると、四年前に失踪した妹・紫陽(しはる)のものと一致した。不可解な鑑定結果から担当教授の石見崎明彦に相談しようとするも、石見崎は何者かに殺害される。古人骨を発掘した調査員も襲われ、研究室からは古人骨が盗まれた。悠は妹の生死と、古人骨のDNAの真相を突き止めるべく動き出し、石見崎の姪である唯と調査を始めるも、予測もつかない大きな企みに巻き込まれていく――。(粗筋紹介より引用、一部追記)
 2024年、第23回『このミステリーがすごい!』大賞文庫グランプリを受賞。2025年2月、宝島社文庫より刊行。

 帯を見るとみんな絶賛しているけれど、正直言って今一つ。時系列や視点がころころ変わるのだが、これが今一つ機能しておらず、さらに書き分けがあまりできていない。それ以上に問題なのは、人物描写がまったくできていないこと。主人公の七瀬悠はものすごいハンサムということなのだが、その造形が全く伝わってこない。紫陽についても同様。さらに敵役である牛尾がどれだけ怖いのか、さっぱりわからない。付け加えると、宗教団体の樹木の会もさっぱりわからない。ただ雰囲気だけで読者にわかってもらおうとするのは、今後は控えてほしい。
 そして人骨の謎についてはあまりにもストレートすぎ。もう少し工夫はできなかったのだろうか。
 ただ、読ませる力があることは事実。ツッコミどころ満載でも、最後まで読めたし。これで読者に見透かされないストーリーとわかりやすい描写力が付けば、もっと面白い作品を書くことができると思われる。