平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

ジャック・カーリイ『百番目の男』(文春文庫)

 連続放火殺人を解決、異常犯罪担当部署に配属された刑事カーソンには秘密があった。誰にも触れられたくないくらい秘密だ。だが連続斬首殺人が発生、事件解決のため、カーソンは過去と向き合わねばならない……。死体に刻まれた奇怪な文字に犯人が隠す歪んだ意図とは何か。若き刑事の活躍をスピーディに描くサイコ・サスペンス。(粗筋紹介より引用)
 2004年、アメリカで発表。2005年4月、邦訳刊行。

 作者のジャック・カーリイはケンタッキー州生まれ。広告業界で20年以上勤務の後、2004年に本作でデビュー。
 サイコサスペンスは苦手なのだが、次作『デス・コレクターズ』の評判が高いので、まずは第1作を読むしかない、ということで手に取ってみる。
 連続斬首殺人事件という異常な事件が発生しているのに、主人公の「僕」こと、アラバマ州モービル市警察本部の精神病理・社会病理捜査班(PSIT)に所属するカーソン・ライダーが自身のトラウマに悩まされるし、市警内の政治力学に振り回され、そのくせ事件より検視局に採用されたアヴァ・ダヴェネルとの関係に現を抜かすわ、で本当に大丈夫なのかなどと思ってしまう脱線が多い。相棒であるハリー・ノーチラスがいなかったらどうなっていたんだろうと思ってしまう。
 それでも事件そのものの展開はスピーディーだし、法医学や心理学の要素を散りばめたやり取りは面白い。まともな人はほとんどいないんじゃないか、という登場人物の言動には辟易させられた。それに、結末の動機については言われるほど驚かなかったかな。むしろこんなことよく考えたな、という呆れの方が強い。まあ付いていけない、と言った方が早いんだが。
 世評ほど楽しめなかった、というのが本当のところ。それでも、こんな馬鹿な(誉め言葉)作品を考えるのは、日本だけじゃなかったんだ、ということを知れただけでも収穫かも知れない。