油断大敵。「推理」のその先へ――。ミステリの可能性を押し拡げるシリーズ最新作! 書き下ろし短編「平行線は交わらない」など、全4篇を収録した作品集。
【収録作品】
「心理的
「被疑者死亡により」
〈交換殺人〉の疑いを晴らしてほしい。だが養父を亡くした依頼人には、多額の死亡保険金が転がり込む予定で――。
「次はあんたの番だよ」
ランナーが公園で目撃した“女の幽霊”。その顔は二日前に殺された資産家女性と瓜二つだった。
「平行線は交わらない」(書き下ろし)
和菓子屋店主が殺された事件。背景には和菓子経営者の兄弟の因縁が……?
(以上、帯より引用)
2020年~2024年、『ミステリーズ!』『メフィスト』掲載作品を加筆修正した三本に加え、書き下ろしを加え、2026年4月刊行。
2019年9月の『法月綸太郎の消息』以来、7年ぶりとなる短編集。この間は評論ばかりで、ミステリは全然書いていない。何をやってるんだ、法月、と言いたくなってしまう。そのあたりについては本人も自覚しているようで、あとがきで愚痴めいたものを書いている。悩んでばかりではなく、もう少し読者の期待に応えればいいのに、とは思ってしまうが。
最初の二本は犯人当て小説だったものから、見出しと読者の挑戦状を除いたもの。「心理的瑕疵あり」は意外な真相がちょっと予想外のもので面白かったが、「被疑者死亡により」は手がかりに工夫はあれど、設定そのものから犯人当てまでかなりきつい。後者、犯人当てと言い切ってしまえば登場人物が少ないから予想はつくかもしれないが、さすがにこの動機は飛躍しすぎというか、そこにいたるまでの手がかりがなさすぎというべきか。
「次はあんたの番だよ」は「ラスト一行で世界が反転する短編」という依頼を受けて書いた作品。法月自身が「苦しまぎれに法月シリーズの鋳型に頼った結果、足下がおぼつかなくなった」作例の典型と書いている通り、内容を理解するのにかなり苦労してしまう作品。ラスト一行で反転するのでなければ、もっとわかりやすく書けただろう。
書き下ろしの「平行線は交わらない」は、150枚弱の中編。ただ人間関係を説明するのに回りくどい説明をしているため、その分長くなった、という印象しかない。はっきり言ってしまえば、ごちゃごちゃしすぎ。もっとシンプルに書けるはずの作品である。
執筆時期が新しくなればなるほど、書き方がくどくなってきている。もともと説明がくどい作家だったが、作品全体がくどくなるのはちょっとしんどい。悩み過ぎなんだろうな、作者は。もっと割り切ればいいのに。
巻末に法月綸太郎シリーズ作品ガイドがあり、そこで長編8作、短編集8作(アンソロジー1冊を含む)、番外編1冊(『リレーミステリ 吹雪の山荘』と書かれている。アンソロジー1冊が、なぜかどこにも紹介されていない。いったい何を指しているのだろう。『名探偵傑作短篇集 法月綸太郎篇』のことかな。
