平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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キャロル・オコンネル『愛おしい骨』(創元推理文庫)

 十七歳の兄と十五歳の弟。ふたりは森へ行き、戻ってきたのは兄ひとりだった。家政婦ハンナに乞われ二十年ぶりに帰郷したオーレンを迎えたのは、過去を再現するかのように、偏執的に保たれた家だった。夜明けに何者かが玄関先に、死んだ弟の骨をひとつひとつ置いてゆく。一見変わりなく元気そうな父は、眠りのなかで歩き、死んだ母と会話している。これだけの年月を経て、いったい何が起きているのか? 半ば強制的に保安官の捜査に協力させられたオーレンの前に、町の人々の秘められた顔が、次第に明らかになってゆく。迫力のストーリーテリングと卓越した人物造形。著者渾身の大作。(粗筋紹介より引用)
 2008年、発表。2010年9月、邦訳刊行。

 ニューヨーク市警刑事キャシー・マロリーシリーズを書き続けている作者が、『クリスマスに少女は還る』以来に書いたノンシリーズ長編。
 『クリスマスに少女は還る』が長すぎて肌に合わなかったので、評価は高いけれどどうなのかな、と思って読んだけれど、いいじゃないですか。1位の評価に誤りはなかった。
 20年ぶりにカリフォルニア州北西部に位置する小さな町コヴェントリーに帰ってきた元合衆国陸軍犯罪捜査部下級准将のオーレン・ホッブズ。昔のままの家で迎えてくれたのは、オーレンを呼んだ家政婦のハンナ・ライスと、元判事の父ヘンリー。そこへ20年前に行方不明になった弟・ジョシュアの骨がひとつひとつ、玄関先に置かれていく。いったい誰が骨を置いているのか。オーレンは調査を始める。
 物語が大きく動き出すのが1/3ぐらいなのだが、そこにいたるまでの背景と人物描写が非常に巧く、ストーリーに引きずり込まれる。小さな町を舞台にした人間ドラマの趣きが強く、謎解きとしての要素が少ないのは残念だが、それを上回る物語の面白さがある。過去を秘めている者たちが複雑に絡み合うが、オーレンが自らの過去と傷に触れつつ、もつれた人間関係を少しずつ明らかにしていく流れが味わい深い。  こういう作品はどちらかと言えば苦手にしていたのだが、本作は面白く読めた。多分こういう作風の小説が、作者が本当に書きたいものなのかもしれない。