平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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北國浩二『リバース』(PHP文芸文庫)

 プロをめざしているバンドマン・柏原省吾はある日、恋人の上野美月から別れ話を切り出された。省吾の幼馴染である桂木妙子の交際相手のエリート医師・篠塚と付き合うというのだ。その直後、省吾は不思議な能力があるといわれている少女・野原すみれとともに、篠塚が美月を殺しかけている光景を幻視する。嫉妬ゆえの妄想か、それとも……!? 省吾は美月を守り、彼女との幸せを取り戻せそうとするのだが――読後感さわやかな、二転三転の長篇ミステリ。(粗筋紹介より引用)
 2009年6月、原書房より書下ろし単行本刊行。2015年、文庫化。

 作者の作品を読むのは初めて。
 未来を見える人が悲劇を回避して未来を変えようと動き回る設定だったので、これはよくあるパターンかとややげんなりしながら読み進めたのだが、第三章の終わりで予想外の方向に進む。ここからの二転三転ぶりが巧い。特に未来の視える人物がすみれだけではなく、省吾自身も視てしまうところがお見事。ほとんどストーカーとしか思えない省吾の行動の説得力が増す役割を果たしている。またイライラさせられる登場人物たちの行動や言動にも、読み終わって意味があるものであったところにも感心した。
 ただ、その点を差し引いてもちょっと読みにくかったかな。なんかもどかしいというか、もっさりしているというか。背景描写をもう少しスッキリできれば、サプライズ効果がもっと上がったと思う。
 よくできているけれど、もっとよくできるだろう、と言いたくなるような作品。悪くはなかったけれどね。