百崎日向は結婚が決まり、十年ぶりに故郷の竹之山を訪ねようとしていた。日向には小学校卒業までの記憶がほとんどなかったが夕陽に照らされる雪景色だけは覚えていた。日向は駅のホームで親友だったと語る相原沙耶子と出会う。突然、電車内を暗闇が覆い、日向は気を失う。目覚めるといつの間にか夜の竹之山駅にいた。人がまったくいない、明らかに異世界の竹之山駅の外には雪が積もり始めた女性の死体があり、その手には謎の手紙が握られており、竹之山温泉へ向かうよう書かれていた。襲いかかってくる黒い影から逃げながら、この出られない世界からなんとか脱出しようと温泉街をさまよう。日向の婚約者である神原正樹は、消えた日向を探し始める。繰り返される残酷な悪夢、一体この町で何があったのか。失った記憶を取り戻したとき、真の恐怖が日向を襲う――。(粗筋紹介より引用)
2017年、第24回日本ホラー小説大賞読者賞受賞。応募時タイトル「竹之山の斜陽」。改題、加筆修正のうえ、同年10月、角川ホラー文庫より刊行。
結婚が決まった女性が、当時の記憶がほとんどない故郷を十年ぶりに訪ねる話。そこで遭遇する恐怖。
なんとか我慢して最後まで読んだけれど、話が薄いなあ。記憶喪失というだけでも食傷気味なのに、さらに○○ですか。一番悪いところは、背景の説明不足なところ。景色も温泉街も小学校も飲み屋も事件現場も、通り一遍な説明しかなく、情景が全く浮かんでこない。人物描写も下手。そもそも日向と正樹がどうやって知り合って、どういう経緯があって婚約したんだと聞きたい。そんな基本的な説明がないから、正樹の悲壮感や行動が上っ面にしか見えない。タイトルにもなった「ハラサキ」の設定もつまらなかったし。
ラストもあの展開ならこうなるだろう、という読者の想像通りの終わり方。出来の悪いゲームをノベライズ化したような作品。恐怖を感じるところもないし、まあ、はっきり言って面白くなかった。読者賞とはいえ、受賞できたのが不思議。二作目を書いていないようだけど、それも仕方がないところだろう。
