平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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マルク・ラーベ『19号室』(創元推理文庫)

 2019年2月、ベルリン国際映画祭の開会式場に悲鳴が響き渡った。オープニングで、女性が殺害される瞬間をとった予定外の映像が上映されたのだ。金髪の女性が何者かに襲われ、大きな釘で心臓をひと突きされていた。しかも、彼女は市長の娘で女優の卵だと判明。映像はあまりにもリアルで、目出し帽の人物が上映を強要したという。トム・バビロン刑事は捜査を始めるが、相棒の臨床心理士ジータは、映像内の壁に残されていた「19」と自分の共通点を見つけて戦慄する。そして新たな惨劇が! 『17の鍵』につづく、疾走感抜群のシリーズ第2弾。(粗筋紹介より引用)

 2019年、ドイツで発表。2025年2月、邦訳刊行。

 累計発行部数が43万部を超える人気を得た「刑事トム・バビロン・シリーズ」全4作の2作目。3冊目が出るころに合わせて読もうと思っていたのだが、なかなか予告が出ないので我慢ができなくなって手に取ってみた。『17の鍵』で書かれた2017年の大聖堂殺人事件から1年半後が舞台。トムはアンネと結婚し、子供が産まれている。
 今回もかなりショッキングな事件からスタート。失踪したトムの妹の影が見え隠れするも、今回はジータの痛ましい過去が事件と密接に絡んでくる。さらにトムとジータの過去に意外な繋がりも明らかになる。
 前作と同様にトムの捜査は暴走。前作ではまだストッパーであったジーナも一緒に暴走するから、捜査のスピードは速すぎ。そりゃあ、これだけ勝手に走り回れば、周囲の刑事たちから反発を食らうのも当然だよな、と思わせる。連続殺人にまで発展するし、前作と同様に東西ドイツの関係が暗い影を落としているのだが、これだけのショッキングな内容が、トムとジータが動くだけで解決するという荒唐無稽な流れすら容認してしまいたくなるぐらいの疾走……というより暴走か。言ってしまえば無茶苦茶なのだが、面白く読ませるのだから大したものである。
 ベストに選ぶような作品ではないが、明け透けな次作の引きも許容できる面白さなので、次作を待ちますよ、私は。