平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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フランシス・ビーディング『イーストレップス連続殺人』(扶桑社BOOKSミステリー)

 風光明媚なノーフォーク海岸沿いの保養地イーストレップスで、老婦人が友人宅を訪れた帰りにこめかみを刺されて殺害される。続けて第二、第三の殺人が同様の手口で繰り返され、街は謎の殺人鬼「イーストレップスの悪魔」の影におびえることに。地元警察はついに有力な容疑者を確保するに至るのだが……。意を凝らしたミスディレクションと巧妙なレッドヘリング、白熱の裁判シーン、フーダニットとしての完成度。映画『白い恐怖』原作者による、本格ミステリー黄金期の知られざる傑作を本邦初訳!(粗筋紹介より引用)
 1931年、イギリスのホッダー・アンド・ウトン社とアメリカのミステリ・リーグ社から刊行。2025年6月刊行。

 作者のフランシス・ビーディングは、演劇評論家・作家のジョン・レスリー・パーマーと、オックスフォード大学ベイリアル・コレッジの後輩に当たるヒラリー・エイダン・セント・ジョージ・ソーンダーズの合作ペンネーム。ともに国際連盟事務局で働いていた時期に知り合って共作を始めたとある。イギリス秘密情報部のアリステア・グランビー大佐が活躍するスパイ小説シリーズを中心に30冊以上出版している。日本では、ヒッチコックの映画の原作であるノン・シリーズ『白い恐怖』(ハヤカワ・ミステリ)が2004年に出版されたのみである。
 舞台となったイギリスのイーストレップスは架空の街であるが、ノースレップスがモデルであると訳者は述べている。
 海岸沿いの保養地で起きる連続殺人、そして犯人逮捕後の裁判、そして事件の真相と結末、というストーリー。前半の連続殺人は、各登場人物の内面がよく描かれてい引き込まれる。裁判の緊迫感もなかなか。ただ登場人物が限られていることもあり、真犯人はあまりにも見え見え。書かれた時代を考えると、当時としてはそれなりに新しかったんだろうなとは思う。ただ、真犯人の証拠については読者にわかりようがないものであるし、動機についても終わってみて初めてわかるもの。一応フーダニットではあるが、本格ミステリではない。
 なんとも評価が難しい作品。書かれた時代のことを考えると新しいのかもしれないが、今読む分にはサスペンスドラマとしての途中までの面白さ以外は伝わらないかな。それなりに楽しく読んだのだが、その分最後のがっかり感も結構強い。この二人、本格ミステリを読んでこなかったのだろうなと思った。