平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

宮西真冬『誰かが見ている』(講談社文庫)

 問題児の夏紀(なつき)に手を焼く千夏子(ちかこ)の唯一の楽しみは、育児ブログを偽物の幸せで塗り固め、かりそめの優越感に浸ること。だがある夕方、保育園から一本の電話が。「夏紀ちゃんがいなくなりました」。刹那、千夏子は彼女('')が夏紀を連れ去ったと確信し……。最後に暴かれる千夏子の最大の“嘘”に驚愕する衝撃サスペンス!(粗筋紹介より引用)
 2016年、第52回メフィスト賞受賞。2017年4月、講談社より単行本刊行。2021年2月、文庫化。

 不妊治療で生まれた3歳の夏紀へのある違和感から可愛がれず苦しみ、ママ友とも仲良くなれず、7年前から偽の幸せも交えて書き続けている育児ブログに逃げるスーパーアルバイトの榎本千賀子。子供が欲しいが5歳年下の夫とはセックスレスで、37歳という年齢もあり焦っているアパレルブランド店員の宇多野結子。職場の保育園での人間関係がうまくいかず、ハイスペックな恋人ともうすぐ結婚できることに縋りつつ、ママブログを糾弾するスレを見て癒されている保育士の若月春花。夫、3歳の娘と一緒にとある理由でタワーマンションに引っ越してきた高木柚季。
 男性だけでなく女性の世界でもいじめと嫉妬に溢れているのは今さらのことであるが、こうも生々しく書かれると読んでいるのが苦痛になってくる。それでも主要登場人物4人を含む周囲の登場人物の感情や行動が絡み合い、もつれていく展開は目を離せない。人の不幸せをこっそり楽しむ人は多いんだなと思ってしまった。読んでいくうちに家庭での男って理不尽な存在なんだなと、背筋が寒くなる人もいるだろう。
 作者の仕掛けは唐突過ぎて、うまく行ったとは思えない。最後の絡み合いはかなり不自然。そして大団円というのは安易じゃないかい、と思うのではあるが、それでも最後にホッとしたのだからこれでよかったのかもしれない。
 書き方は巧いね。あとはもう少し自然なストーリーが作れればよいと思う。