平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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フリーダ・マクファデン『ハウスメイド』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

 前科持ちのミリーが手に入れた、裕福な家庭でのハウスメイドの仕事。だが、この家は何かがおかしい。不可解な言動を繰り返す妻ニーナと、生意気な娘セシリア。夫のアンドリューはなぜ結婚生活を続けていられるのだろうか? ミリーは屋根裏部屋を与えられ、生活を始める。しかし、この部屋には……。そして、家族にまつわる真相が明かされるや、それまでに目にしたものすべてがひっくり返る。恐怖と衝撃のエンタメ小説。(粗筋紹介より引用)
 2022年、発表。2023年、国際スリラー作家協会賞ペイパーバック・オリジナル賞受賞。2025年8月、刊行。

 全米200万部突破のベストセラーが刊行。作者のフリーダ・マクファデンはボストンで脳外科医として働く傍ら、2013年に自費出版で作家デビュー。サスペンス路線の中編、長編を30編ほど執筆している。
 主要登場人物はわずか5人。前科持ちの美人、そしてハウスメイドのミリー(ウィルヘルミナ)・キャロウェイ。彼女を雇うのがニューヨーク郊外の高級住宅地に住むニーナ・ウィンチェスター。その夫であり、父親の会社を継いだアンドリュー。二人の娘である小学四年生のセシリア。そして庭師である英語をほとんど話せない庭師のエンツォである。
 出所後に勤めていたウェイトレスを首になって車中暮らしだったミリーは、ニーナとの面接を経て、ウィンチェスター家のハウスメイドとして雇われる。豪邸にもかかわらず、ミリーの部屋は狭い屋根裏部屋。ニーナはその日によって異なるおかしな言動を繰り返し、ミリーを困惑させる。そのうちにニーナのいじめはひどくなっていく。
 これはよくある古臭いパターンかと思いながらも、語り口がよいのでテンポよく第1部を読み進めていったのだが、第2部でガラッと変わる。仕掛けそのものはストレート、というか単純なものだが、それだけでないのがこの作品のすごいところ。最後は本当に背筋がぞっとする。あまりにも淡々とした口調だから、余計に怖い。
 500ページ以上あるけれど、全く退屈しない。どんどん物語は進むし、無駄な描写もない。作者がどこまで計算しているかはわからないが、隙のない構成である。それでいて、結末に向けての盛り上がりの巧さ、この衝撃。全米でベストセラーになるのも納得の傑作である。
 映画化されるのは当然だろうが、これがシリーズ化されているというのが、本当に最後の衝撃かも。続編が楽しみである。と思ったら、来月出るんかい。