いずれ迎える別離。それでも一緒にいたかった。
廃墟となった遊園地、ここは秘密の動物霊園。奇妙な名前の丘にいわくつきのペットが眠る。弔いのためには、依頼者は墓守の青年と交渉し、一番大切なものを差し出さなければならない。ゴールデンレトリーバー、天才インコ、そして……。彼らの“物語”から、青年が解き明かす真実とは。人と動物のあらゆる絆を描いた、連作長編ミステリー。(粗筋紹介より引用)
『esora』『メフィスト』掲載作品に書下ろし3編を加え、2012年9月刊行。
セラピストの金子リサは、ハナの遺骨と位牌を収めた小さな骨壺を持って、廃墟となった遊園地に来た。花が好きだったハナを、ここで埋葬してもらうために。「カマラとアマラの丘 ——ゴールデンレトリーバ——」。カマラとアマラは、インドで狼に育てられた2人の少女。
ブライアン・レイと
刑事の市川芳弘は大晦日の夜、廃墟の遊園地にやってきて、墓守の青年森野と出会う。彼が探しているのは、殺人事件の現場から逃げ出した天才インコだった。「シレネッタの丘 ——天才インコ——」。シレネッタとは人魚姫のこと。
若手弁護士の鷺村信彦は、深夜に老人の後を尾けていくうちに、閉鎖された遊園地に辿り着いた。石笛でネズミを誘き出すというその老人がどうしてリゾート開発予定地の訴訟に関わっているのか。「ヴァルキューリの丘 ——黒い未亡人とクマネズミ——」。ヴァルキューリとは、北欧神話に出てくる戦争の女神。
有名私立中学校に入った僕は、捨てられたラプラドールにライカと名付ける。「星々の審判」。
廃墟の遊園地にある動物霊園を訪れた者は、生物と関わる死にまつわるエピソードを話す。しかしその話を聞いた墓守の青年森野が、裏に隠された真実を引きずり出して突きつける。ファンタジーで始まり、本格ミステリとして終わる連作短編集。
幻想的な舞台であるのに、森野が謎を解き明かすと、そこに見えてくるのは読者の目に入ってくるのは残酷すぎる真実。このギャップが作者らしいといえる。ただ、好みは分かれそう。個人的にはあまり好きになれない。趣向として面白いのはわかるが、短編一つで十分と思ってしまう。森野の謎についてもう少し触れてくれると、また違った印象を受けたかもしれない。もう少しハッピーエンドに終わってもいいだろうに。よくできた作品だとは思うが、もうちょっと救いがあった方が好きな私は、そのあたりもちょっと苦手ではある。
