平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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貴志祐介『ミステリークロック』(角川文庫)

 人里離れた山荘での晩餐会。招待客たちが超高級時計を巡る奇妙なゲームに興じる最中、山荘の主、女性作家の森怜子が書斎で変死を遂げた。それをきっかけに開幕したのは命を賭けた推理ゲーム! 巻き込まれた防犯コンサルタント(本職は泥棒!?の榎本と弁護士の純子は、時間の壁に守られた完全密室の謎に挑むが……(「ミステリークロック」)。表題作ほか計2編収録。『コロッサスの鉤爪』と2冊で贈る、防犯探偵・榎本シリーズ第4弾。(粗筋紹介より引用)
 『小説野性時代』掲載。2017年10月、単行本『ミステリークロック』刊行。4編のうち「ゆるやかな自殺」「ミステリークロック」の2編を分冊し、2020年11月、角川文庫で刊行。

「ゆるやかな自殺」は、組事務所で厳重に鍵の閉まった部屋を開けるよう組長の娘から依頼された榎本径が、部屋の中で組員が変死していた謎を解く話。舞台が舞台なだけに、弁護士の青砥純子は出てこない。緊迫した状況で割と残酷な内容なのにどこかコミカルなのは不思議だが、4編の中で一番好きかもしれない。トリック自体は子供騙しだが。
「ミステリークロック」は完全密室の謎に榎本と純子が挑むのだが、例によって純子がとんでもない推理を繰り広げる。毎回毎回同じことを繰り返すのに、少しは口を閉じるということを知らないのだろうか。もっとも純子の迷推理が出なくてはこのシリーズが楽しめないのだから、仕方がないか。
 そもそも“ミステリークロック”がどんな物かを知らなかったので、検索するまで全然ピンと来なかった。そちらに気を取られたことと、時間の壁の設定があまりにもぎゅうぎゅう詰めだった分、かえって榎本の推理が楽しめなかった。ミステリファンなら、スマホを回収した時点で肝の部分はほぼ予想できたでしょうね。この作品は、よくぞここまで詰め込んだ、というのを楽しむべき作品のはずなんだが、そこが楽しめないとどうにもならない。
 2分冊なら、もう1冊の方をお薦めします。