小石探偵事務所の代表でミステリオタクの小石は、名探偵のように華麗に事件を解決する日を夢見ている。だが実際は9割9分が不倫や浮気の調査依頼で、推理案件の依頼は一向にこない。小石がそれでも調査をこなすのは、実はある理由から色恋調査が「病的に得意」だから。相変わらず色恋案件ばかり、かと思いきや、相談員の蓮杖と小石が意外な真相を目の当たりにする裏で、思いもよらない事件が進行していて──。(粗筋紹介より引用)
WEB『STORY BOX』2024年9月号~2025年1月号連載。連載時タイトル「探偵・小石の色恋推理」。加筆修正のうえ、2025年9月、単行本刊行。
森バジルの作品を読むのは初めて。それ以前に名前すら知らなかった。第30回松本清張賞受賞者か。
まず錚々たる……とまではいかないにしても、それなりのメンバーがそろっている帯はスルー。どうせ期待は裏切られるし、呼んだって失望するだけだ、そう思っていた。
ミステリオタクの女性で事務所代表の小石と男性相談員の蓮杖が、浮気調査にまつわる謎を解いていく連作短編集……と簡単に考えていた私が甘かった。よくぞまあ、ここまで伏線を張り、読者の予想をひっくり返してくれたものだ。
中身に触れづらい作品だが、この仕掛けは大したもの。舞台も、登場人物も、会話も、そして恋愛も、謎解きも。至る所に仕掛けが待ち受けている。少女漫画みたいな設定も、これが必然だったというのは驚きだった。
恋愛小説に本格ミステリを混ぜ合わせ、わざと不器用にシェイクして、だけどそのグラデーションに唸らせられる作品。素直に感心、素直に脱帽。ランキングをにぎわせるだろう。これは過去の作品も読んでみたくなる。
