お嬢様・彩莉は転がり込んできた莫大な遺産で孤島にギミックつきの館を建設し、かつて自分の書いた小説を馬鹿にした相手を殺害しようと企てる。
「おまえらがバカにした私の考えたトリックで死ね」
嵐の気配が近づく中、ターゲットのミステリ愛好者たち(ショーゴ、詩音)、医療関係者(みくに)、刑事(矢頭)、霊能者(真波)、噓で雇われたメイド(アリカ)が館に集められ、金にものを言わせた自前のクローズドサークルが完成。有能メイド・葵の鬼のダメ出しの末、綿密に練られた復讐劇は、成功間違いなしと思われた。しかし、一夜明けると、彩莉が殺した覚えのない死体が転がっていた……。(帯より引用)
2025年7月、書下ろし刊行。
孤島に仕掛けだらけの洋館を立てるのはミステリファンなら一度は夢を見るかもしれないが、本当に殺人を企てる人がいるのかね、と問いたくなる。そこはまあ我慢しよう。それにしてもターゲットたちの素性ぐらい、もう少し調べるんじゃないかとはいいたくなる。いくら「全員嘘つき」とはいえ、余りにも脇が余すぎる。
主人公のお嬢様があまりにもポンコツで、読んでいる方もイライラしてくる。雇われる方も雇われる方で、少しは止めろよと言いたくなる。さらに言えば登場人物も首をひねるような行動をとるものが多く、特に犯人の動機についてはさすがに説明不足。
嵐でクローズドサークルの孤島の館を舞台にした連続殺人事件自体手垢の付いたものだし、トリックも容易に想像がつくもの。そしてトリックがわかれば動機を無視しても犯人がわかってしまう。まあ、だから探偵役もすぐに犯人にたどり着いたわけだが。登場人物が「嘘つき」ばかりなのも今更。どこを楽しめばいいんだろう、というぐらい新味がない。
古くなったり欠けてしまったりしたブロックを無理矢理つないで建ててみた、不格好で今にも倒れそうなおもちゃの家。そんな本格ミステリである。何を書きたかったんだ、作者は。
