平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

山口未桜『白魔の檻』(東京創元社)

 研修医の春田芽衣は実習のため北海道へ行くことになり、過疎地医療協力で派遣される城崎と、温泉湖の近くにある山奥の病院へと向かう。ところが二人が辿り着いた直後、病院一帯は濃霧に覆われて誰も出入りができない状況になってしまう。そんな中、院内で病院スタッフが変死体となって発見される。さらに翌朝に発生した大地震の影響で、病院の周囲には硫化水素ガスが流れ込んでしまう。そして、霧とガスにより孤立した病院で不可能犯罪が発生して──。過疎地医療の現実と、災害下で患者を守り共に生き抜こうとする医療従事者たちの極限を描いた本格ミステリ。2025年本屋大賞ノミネートの『禁忌の子』に連なる、シリーズ第2弾。(粗筋紹介より引用)
 2025年8月、書下ろし刊行。

 第34回鮎川哲也賞『禁忌の子』が話題になった作者の第2作。本作も城崎響介が事件解決役を務める。
 山奥の病院で濃霧に覆われ孤立した状態で、しかも大地震硫化水素が病院に流れこんでくるというタイムリミットサスペンス。硫化水素というのはちょっと珍しいが、その点を除けば閉ざされた環境+刻一刻と近づく全滅の危険というよくある設定としか言いようがない。この状況下だと、誰がとかどうやってというよりも、なぜの方に意識が捉われてしまうのだが、残念ながら動機の方はありきたりだった。そして「誰」も「どうやって」も、大して面白くない。最後に城崎が犯人と対峙して追いつめるロジックも、作り物めいて感心できない。
 城崎の過去にちらっと触れたりとシリーズならではのエピソードもあるのだが、周りが初対面の人ばかりということもあり、城崎の冷静さばかりが目立って魅力が伝わってこない。
 なんだ、こうやって不満ばかり書いてみると、前作の良さは何だったんだと思ってしまう。ストーリーは達者なんだが、材料の組み合わせが悪くては面白さにつながらない。現役の消化器内科医ならではの医療知識も、本作ではうまく溶け込んでいない。舞台作りに奇を衒いすぎた感がある。もう少し謎解きの方に力を入れてほしいものだ。
 今回はシリーズ三作目の予告はなし。どこを舞台にしたらよいのか迷っているのかな、作者は。