平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ジョージェット・ヘイヤー『マシューズ家の毒』(創元推理文庫)

 嫌われ者のグレゴリー・マシューズが突然死を遂げた。高血圧なのに油っこいカモ料理を食べたせいだと姉は主張するが、別の姉は検死をやるべきだと主張。すったものだの末に実施したところ、なんと死因はニコチン中毒で、他殺だったことが判明した。だが殺人の部屋はすでに掃除されており、ろくに証拠は残っていなかった。おかげでスコットランド・ヤードのハナサイド警視は、動機は山ほどあるのに、決め手が全くない事件に携わる羽目に……。巨匠セイヤーズが認めた実力派が練りに練った傑作本格ミステリ。(粗筋紹介より引用)
 1936年、イギリスで発表。2012年3月、邦訳刊行。

 『紳士と月夜の晒し台』に続くハナサイド警視シリーズ第2作。ジョージェット・ヘイヤーの作品を読むのは初めて。解説を読むと、イギリスではミステリ作家としてよりも歴史小説、ロマンス小説の作家として著名で、リージェンシー・ロマンス(英国の摂政(後のジョージ四世)時代 1811-1830年くらいまで)と呼ばれるジャンルの原型を作った作家とのこと。
 ロマンス作家だからかどうかはわからないが、とにかく登場人物がやかましい(苦笑)。最初からあまりいい印象がないのに、さらにまあ喋る、喋る。さらに話はあっちこっちに飛ぶし、訊いているハナサイド警視たちが気の毒になってくる。
 「セイヤーズが認めた」とあるけれど、なんかロマンス小説を書くためのスパイスとしてミステリ要素を入れているとしか思えない。元々誰が犯人かという点はどうでもいいや、というぐらい被害者には同情できない。そしてトリックがあるわけでもない。終盤で唐突なロマンスを見せられる。せめて最後はスカッと解決するかと思ったら、ハナサイド警視はいいところを持っていかれてしまう。うーん、本格ミステリへの皮肉なのか、これは。
 まあロマンス小説の作家だし、そちら方面に力が入るのは仕方がないんだろう。退屈することはなかったし、読者を楽しませる力は凄いんだと思う。