平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

坂崎かおる『箱庭クロニクル』(講談社)

 彗星のように現れた天才が放つ、6つの幻想世界の最初の一文。
 そこにひとつの戯画がある。家一軒ほどの大きさのタイプライターだ。「ベルを鳴らして」(日本推理作家協会賞短編部門受賞作)。
 地獄はどこにでもある。内とか外とか関係ない。「イン・ザ・ヘブン」。
 これは「バッグ・クロージャ―」これは「ランチャーム」これは「ポイ」。「名前をつけてやる」。
 拝啓 盛夏の候、時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。「あしながおばさん」。
 ゾンビは治る。マツモトキヨシに薬が売ってる。「あたたかくもやわらかくもないそれ」。
 水流は左に渦を巻いている。「渦とコリオリ」。
(以上、帯より引用)
 『小説現代』『徳島新聞』2023~2024年掲載作品に書き下ろし2本を加え、2024年11月刊行。2024年、「ベルを鳴らして」で第77回日本推理作家協会賞短編部門受賞。2025年、『箱庭クロニクル』で第46回吉川英治文学新人賞受賞。

 SFや幻想小説を書く人だったよな、坂崎かおるって。それがなぜ日本推理作家協会賞? その疑問もあって購入。「ベルを鳴らして」は邦文タイプライターを教える中国人の先生と、それを習う女学生の戦前、戦中の話。その少女が戦争時、中国であることをしてしまったために……というストーリーである。実は2023年、第14回創元SF短編賞の最終候補作だった。その後『小説現代』2023年7月号に掲載された。
 作者自身、受賞の言葉では「望外も望外、別の世界線に迷いこんでしまったような気分です」と書いている。選評を読んでも、判断に迷う人がいたようだ。とりあえず読んでみたが、うーん、どこがミステリなんだろう。選評でもあるが謎らしい謎はないし、合理性はないし、ファンタジーならではの結末をつけている。とはいえ『妄想銀行』や『日本沈没』も受賞しているし、力のある作品であることは確か。ジャンルレスの作品が受賞してもいいのかもしれない。
 ただジャンルレスと書きながらこう書くのは変だが、自分的には苦手なジャンルだったし、面白くは読めなかった。それは他の作品でも同じ。読んでいてものれなかった。はっきり言って、この作品集の魅力がわからない。吉川英治文学新人賞を受賞しているのだから、世間的には評価されているのだろうが。