平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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谷夏読『この恋だけは推理(わか)らない』(東京創元社)

 上城北高校二年二組、窓際一番後ろの席には『恋愛の神様』がいる。「彼女いない歴=年齢」なのに『恋愛の神様』として様々な恋愛相談を受ける、岩永朝司、十七歳。放課後やってきた二年三組の小井塚咲那は、「私に小説のネタになりそうなコイバナを教えてください!」と真剣な眼差しで頼みこんできた。恋愛小説家だというのに恋を知らない咲那は、コイバナと交換に『神様』の助手となり、恋愛相談を二人で解決していくのだが……。爽やかな余韻も美しい「東京創元社×カクヨム 学園ミステリ大賞」大賞受賞作。(粗筋紹介より引用)
 2024年、東京創元社×カクヨム学園ミステリ大賞大賞受賞。加筆修正のうえ2024年12月、単行本刊行。

 恋愛経験がないまま恋愛小説家としてデビューしてヒットするも、二作目が書けない小井塚咲那が、彼女いない歴=年齢なのに保護者が縁結びで有名な神社の宮司だったことから、中学時代から恋愛相談を受けてきて「恋愛の神様」と呼ばれた岩永朝司に、小説のネタになりそうなコイバナを教えてほしいと相談する。朝司は教える代わりに、相談者の悩みの解決を手伝ってほしいと提案し、咲耶は助手として動き回る。
 主人公の小井塚咲那は二次元推しであり、三次元の恋愛経験なし。友達はなく、人と長時間話すのは苦手。表情分析に長けており、顔を見れば人の嘘がわかってしまう。咲耶は悩みを解決するも小説の参考にはできないため、引き続き助手を務めていく。
 咲那と朝司の漫才的なやり取りを面白く読みながらも、結局はただの恋愛相談お悩み解決ものかなとあまり期待せず読み進む。途中で感じた違和感から仕掛けはある程度想像ついたのだが、それでも実際にその仕掛けが明かされる場面が出てくると結構なサプライズ感があるので、作品としては成功している、と思った。しかし本作品の面白さはここから。第一話の雰囲気からは予想できない方向へ流れ、意外な結末に進む。最後まで読んでみると、出だしから伏線が張られていることがわかる。思っていたよりできるぞ、この作者。
 本格ミステリの要素があまりないのはちょっと残念であったが、学園ミステリ×サスペンス×恋愛ものとしては完成度が高い。題材の一つ一つには新味がないけれど、組み合わせての調理方法がうまい。なんとなくだけど、赤川次郎ソノラマ文庫に書いていたジュニアミステリ(『死者の学園祭』とか)を思い出した。次作も楽しみである。ただ、ペンネームだけはちょっといただけない。