著名な作家でもあった大学教授が悲劇的な死を遂げてから25年。その追悼式が開かれる前日、教授の教え子たちが大学の施設に宿泊することになった。かつて作家を志し、教授の下で創作に鎬を削った彼らが旧交を温めるなか、激しくなっていく吹雪。ある部屋のベッドではカラスの死骸が発見され、ベストセラーを生んだ同窓生のひとりは姿を見せようとしない。そして翌朝、階段の下で首の骨を折った死体が見つかりーー。実力派作家がミステリファンの心をくすぐるあの設定を、練達のテクニックで描く傑作!(粗筋紹介より引用)
2023年7月、アメリカで刊行。2025年4月、邦訳刊行。
作者のキャロル・グッドマンは2002年に『乙女の湖』でデビュー。今までに25冊以上出版。2003年度のハメット賞、2018年と2020年度のエドガー賞メアリー・ヒギンズ・クラーク賞を受賞している。日本では『乙女の湖』が2003年にハヤカワ・ミステリ文庫から邦訳が出版されているだけで、本作は二作目となる。
現代パートと、登場人物たちが学生だった過去パートが交互に語られる構成。舞台はニューヨーク州北部にある山と湖を望むブライアウッド大学。主人公で語り手のエレン(ネル)・ポートマンは25年前に大学で学び、15年前に大学へ戻り、今では教養学部長である。ところがこのネルが「信頼できない語り手」であり、何かを隠しているのが容易に想像がつく。追悼式の前日に集まったかつての教え子たちを出迎えるネルとアシスタントのルース・モーリスであるが、隠遁生活を送っているベストセラー作家エレイン(レイン)・ビショップは姿を現さない。猛吹雪が続く朝、ミステリ作家のミランダ(ランディ)・ガードナーが階段から墜落した死体で発見される。
現代と過去が交互に語られることもあり、殺人事件が起きるのは200ページを越えてから。ここまでがなんとも長い。登場人物が20名程度であるが、全然把握しきれないのは、私が年寄りだからというわけでなく、明らかに作者の書き方の問題だろう。そんなことが重なって、読むのが苦痛だった。
殺人事件が起きてからは展開がスピーディーになり、過去の事件も明らかになるにつれて現代との接点が見えてくるようになる。しかも連続殺人で、かつて書かれた小説と同じシチュエーションで殺される見立て殺人にもなっている。ストーリーの組み立て方は、クリスティーの某作品を意識しているのが明らかだ。
ただ問題は、サスペンス度が増す割にそれほど面白くならない点である。あまりにも定型的な書き方が、先の読める展開になっている失敗につながっている。そしてもう一つ残念なのは、主人公のネルに共感も同情もできないことだ。ここに関しては、定型通りにヒロイン化した方が良かったと思う。
ベテラン作家の割には話が散らかって整理整頓も今ひとつ。特に唐突なロマンスは不要だっただろう。もう少しサスペンスで盛り上げられなかったんかいな、と思ってしまう。今まで翻訳されなかったのも、日本人には受けないと判断されていたからだろうか。
